れーちゃん

ダンサー・イン・ザ・ダークのれーちゃんのレビュー・感想・評価

3.0
遺伝性の視覚障害を持つ移民のセルマ。彼女は社会的弱者でありながらも一児の子を持つシングルマザー。
息子に視覚障害が遺伝することを恐れ、早い段階で手術ができるようにと工場での過重労働を続け、長年に渡りコツコツとお金を貯めてきた。
同僚であり一番の理解者である親友キャシー、近所の大家夫婦、彼女に気がある男友達のジェフと周りの人間に恵まれながら一人息子を育てていたが、彼女の視力はどんどん落ち盲目に近づいていく。
そんな時にセルマが貯めていたお金が盗まれ、大きな悲しい事件が起きてしまう。

本作は賛否両論大きく分かれる作品だと思うが、私はあまり賛同できなかった。

彼女が社会的弱者であることを強く謳いながらも、彼女は実際に起きた出来事を主張せず、自分の立場がこうだから仕方ないの一点張り。
周りの人間が彼女を救おうと差し伸べても、視力が遺伝することを息子に話したがらず、息子の視力を救うことが絶対だといい、聞かないのである。

ジェフが、なぜ遺伝するとわかっていて子供を産んだのかセルマに尋ねると、「赤ちゃんを抱いてみたかったから」といった。彼女は産んだ責任としてせめて視力だけは救ってあげたかったのだろうけど、果たして思春期の息子は視力よりも母の死を望んだのだろうか?
この展開は回避できたはずなのに、あえてこの選択をしたのは何故なのだろうかという疑問が残った。

遺伝性の辛さを含め彼女の気持ちが理解できる部分もあったので一概に彼女を否定できないのだけれど、救いの手はいくつもあったのに、救いようがないラストに持っていきすぎている感じがあって、社会的弱者だからこうなってしまったというには少し無理のある作品だなと思ったのが正直な感想。

『サウンドオブミュージック』の曲を用いていたのも、いつも幸せを夢見ている彼女と現実の対比なのか切なく悲しい気持ちになった。
れーちゃん

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