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ダンサー・イン・ザ・ダークのenchanのレビュー・感想・評価

4.8
観てきた中でかなりの名作

主人公は目の病気が遺伝すると知りながらもエゴを貫いて息子を産んだがそれからはその償いをするかのように決して他人にエゴを押し付けずに生きる。息子の明るい未来が全ての判断基準。母親の、理解される事を求めない大きな愛が美しい。

そういう利他的に生きつつも自分の世界を持ってる人ってやっぱりどこか魅力的だし、周りに人が集まってくるじゃないですか。その人を助けたくなる人もいれば漬け込もうとする人もいる。「なんで知を以て反抗しないんだよ」って思ってしまう人はこの映画はあまり好きではないかも。反抗できないのは主人公の性格以外にもブルーカラーだとか、弱視という障害や、女性であるという社会的地位の事も考えないといけない。

本作は救いようがないとか鬱映画だとか言われる事が多い。でも個人的にはむしろ逆だと思っていて、息子の為に残りの人生全てを捧げて、どんなに酷い目に合おうとも運命を受け止め、でもそのおかげでたった少しの愛してくれる人が死を見届けてくれるような生き様は、嫌な事だと分かっていながらも時に他人を傷つけ自分だけのし上がっていく生き方よりもずっと実存的だし、ある意味救いのあるエンドじゃないですか。ずっと損をしながら生きてきた人はこれを観て心に響いたり救われる部分があるのでは。マツコデラックスが絶賛していたのも凄く分かる。
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