RingRingLove

ダンサー・イン・ザ・ダークのRingRingLoveのレビュー・感想・評価

3.7
全編を通して、ことあるごとに主人公の空想が朗らかにミュージカルとして展開され、だからこそ現実との落差に胸が締め付けられる
ミュージカルシーンが差し込まれることで陰鬱な物語に軽快さを与え、テンポよくストーリーを展開させる効果と、おそらくは主人公が解離性障害を患っていることを暗に観客に知らしめる効果をもたらしている

わたしがこの作品を観たのは公開時映画館でのただ1回限りだが、未だに克明にストーリーや場面場面を覚えていて、20年以上たった今でも忘れられないくらいの衝撃だった

あんな感動はない
あれこそがまさに「感情を動かされる」ということなのだろう
まぶたが熱を持って腫れあがるほどに泣いて泣いて泣きまくって、それでも涙は感動の深い海には遠く及ぶことはなかった

ラスト前、ビョークが独房でサウンド・オブ・ミュージックの『My Favorites Sing』を朗々と歌い上げるシーンは明るいだけに悲愴で、いっそ胸が痛くてたまらなかった
あの感動は筆舌では尽くせない
言葉にしたら嘘になる
それでも、あえて言葉で言い表そうとするならば、まさしく魂を揺るがされた
その一言に尽くすしかない
今こうしている瞬間にも、わたしのまぶたに焼き付いたようにまざまざとセルマが思い出されてくる
絶望は希望につながる
彼女の歌にはそれがあった
そう思います

観賞後、「神に問ふ。信頼は罪なりや。」という、太宰の人間失格の一節がぐるぐる頭の中を回っていて離れなかったのを今でも覚えている
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