冬眠くまちゃん

ダンサー・イン・ザ・ダークの冬眠くまちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

明け方にあまりにも眠れなかったので、鬱映画と名高いこちらの映画、観るなら今このタイミングでしょ!?と思い立ち鑑賞。

観てる途中で誰が誰だかわけわからんくなってきたし、「工場で集中して働かないセルマが機械に巻き込まれて大怪我するグロテスクなスプラッター映画だったらどうしよう……!!!」と怯えてしまったので、途中で中断してWikipedia読んでしまった……。
結果、スプラッター映画ではないと安心して観れたし実際そうではなかったけど、結末を知りながら見ると鬱具合半減しちゃったのでは……?という失敗だった……。

なんか、セルマにものすごくイラッとして終わってしまった。さすがに死刑執行シーンはウッとなって泣きそうになったけど、自分本位っていうか我儘っていうか自業自得っていうか……もちろんセルマが他人の悪意に翻弄されたところもあるし、同情の余地があるけれど、なるべくしてこの結末になったんでしょ、と思ってしまう。でもそれが現実世界でのリアルなんだろなぁ、と思ったりもした。
セルマはイラッとくるところがあるけれど、きっとどこか憎めない愛らしさがあるから親しくしてくれる人がいたんだろうし、看守のひとりがあんなにも親切にしてくれたんだろうな(死刑囚にあんなに入れ込んでしまったあの看守のことを考えると苦しくなる、この先仕事するの苦しくない?生きるの苦しくない?セルマの愛らしさって、呪いみたいね)。

ミュージカル映画って、役者も舞台もちゃんと綺麗なものばっかりの印象があったのだけど、これはちゃんと汚くてなんかこう、すごかった。汚い工場で、作業着で油に塗れた美男美女ではない市井の人々が突然歌い踊るという。
その場にあるものや置かれた状況(操作してる機械とか、手に持ってる工具とか、傍聴席の椅子に座ったままとか)を生かしてのダンスでなんかこう、すごくよかった、振り付けも歌もすごく好き。ミュージカルシーンすごく好きだなって思った。

カトリーヌ・ドヌーヴすんごいかっこよかったな……シェルブールの雨傘しか知らなかったのだけど、他の出演作を観てみたくなるな。
キャシーは工場でも稽古場でもずっと手助けをしてきて、最期まで友達を助けたかったろうに。きっとこれからもジーンを支えて生きていくキャシーのことを考えると、なんだか悲しいというかなんというか。
「ジーンに必要なのは母親」とキャシーは主張したけど、それはキャシーはセルマに死んで欲しくないって言ってるような気がした。

工場とか、裁判所とか、監獄とか死刑執行台とか、恐ろしくリアルだった。実際のアメリカの死刑台なんて見たことないけど、本物みたいって思わされた。

わたしは死を救済と捉えているというか、死んだら物語から退場と思っているというか、そのような節があるので、嘘に塗れて死んでいったセルマよりも、残されたジーンやキャシーやジェフや親切にしてくれた看守のこれからの人生を思って重苦しい気持ちになった。
手術したからって本当にジーンの目が良くなったの?とか、ジーンは殺人犯の息子として、キャシーやジェフは殺人犯の友人だった人間として、これから生きていくのでは?とか考えてしまう。映画では「セルマが死んだ」までしか描かれていないから、残された人たちはこの先幸せに生きられたの?とか、余計なことを考えてしまう。
わたしにとっては鬱映画というよりイラッとする映画だったけど、美しく綺麗に組み立てられたストーリー(結末でなくて、結末までの流れが綺麗だった)で好きだった。