ツクヨミ

河のツクヨミのレビュー・感想・評価

(1951年製作の映画)
3.0
"受け入れるのよ、すべて"。大事な人生哲学を教えてくれたガンジス河。
インドのガンジス河流域付近に住んでいるイギリス人家系の家に、片足を失った退役軍人ジョンがやってくるが…
ジャン・ルノワール監督作品。ヌーヴェルヴァーグ(主にトリュフォー)が慕ったと言われるルノワール監督の初カラー作品で、スコセッシのオールタイムベストに入っている作品という評価だけで本作を鑑賞したが、見終わった後からじわじわ響く人生哲学に包み込まれる素敵な教訓を得ることができた。
まず今作はインドに住む金持ちイギリス人たちの家族の話で、そこに退役アメリカ軍人がやってきて"若草物語"のような色めき立つ物語が展開される。そこでイギリス人の娘っ子2人がキャーキャー退役軍人の虜になり恋していく様子のなんと微笑ましいことか。そしてNHKのドキュメンタリー番組が如くインドの文化探訪シークエンスが何度も挟まる編集がなかなかに独特で、劇映画としてはけっこう奇抜な印象ながら微妙な雰囲気を受けた。
しかし物語の肝は後半、退役軍人の退役した理由と障害を負った苦しみを映し出すストーリーが展開されてからはちょっと物語が悲しい雰囲気に包まれ悲劇が起きたりする。そんな中で実は一際異彩を放っていたイギリスとインドの混血娘メラニーが言い放つ一言が優しく心に響いた。悲しいことが起きた時"受け入れるのよ、すべて"と言う彼女のパワーと言うか宗教観が入り混じった人生哲学が染み入る。つまり"すべてを受け入れること→大きなガンジス河がすべてを受け入れ流してくれる"という解釈ができ、素敵なタイトル回収が素晴らしいのだ。メラニーの人生には混血娘なりの葛藤があったはず、そんな葛藤をたった一言で理解させ、悟りの境地に至らせる素晴らしき脚本に感謝。見終わった後には自らの悩みがすべて吹っ飛んだ気がしたし、スコセッシもたまに今作を見てリフレッシュしているのかと考えたら感慨深い。
ストーリーとしてはインドのドキュメンタリーと"若草物語"の二番煎じかと感じたが、根幹にあるメッセージ性に関心した素敵な人生哲学映画だった。人生に迷った時ご覧になってはいかがだろうか、きっと素敵な知見を得られるはず。
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