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反撥の盆栽のレビュー・感想・評価

反撥(1964年製作の映画)
4.4
キャロルの強い眼差しと、彼女が感じる男性のまなざし


 ロマン・ポランスキー監督の初期作にして傑作。内気な主人公キャロルは街を歩くだけで男性にナンパされてしまう女性。彼氏に対してもあまり良い愛情表現が取れていない。一方、同居している姉は男性に対して積極的。この対比がキャロルが抱く"男性恐怖症"を狂った異常者のように描く。
 このキャロルが見る/見られるの行為は最近『ラストナイト・イン・ソーホー』でもエドガー・ライト監督本人が製作する際に下敷きにしたものだと公言。たしかにキャロルとエロイーズは同じ問題を抱えています。

 キャロルが徐々に狂っていく様子が一番のサイコ的である本作ですが、その根っこにはロマン・ポランスキー監督の思想があると思います。同じアパートの一室を舞台にした『ローズマリーの赤ちゃん』でも不吉な静けさから始まり、女性を未知の恐怖に陥れ、そこから生まれる問題を一人で抱え込む姿が描かれました。本作ではその恐怖が「男性のまなざし」から生まれるものであり、現実でも起こり得るからこそ恐ろしい。これこそが現実的な恐怖そのもの。

 目のアップから始まり、目のアップで終わる。本作は最後まで「誰かに見られている」怖さを追求した作品であり、記憶に残る傑作級のサイコスリラー映画でした。

 やはり全ての根源は「汚い男」なのだと。
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