叡福寺清子

悪魔の植物人間の叡福寺清子のレビュー・感想・評価

悪魔の植物人間(1973年製作の映画)
3.0
今年は沢山観ます.三遊亭呼延灼です.特に映画ファンなら当たり前に視聴しているはずなのに未だ未視聴な名作傑作佳作と呼ばれる作品を回収する所存でございます.例えばショーシャンクの空に,スタンド・バイ・ミー,タイタニック,ティファニーで~,フォレスト・ガンプ等々.未視聴は沢山あります.で記念すべき第一作目に選んだ古典が本作の悪魔の植物人間.ドナルド・プレザンスがまだまだ若うございました.だって55歳.今のわたしの1歳下でございますものね.本作ではマッドサイエンティストでございますが,「うははははははは!私はついに神の領域・・・いや私こそが神なのだっ!!」って狂気孕んだマッドじゃなくって,本人は理性的に自身の研究に邁進,ただその研究内容が頭おかしいってだけなのが,余計に剣呑であります.
剣呑といえば,当時は実存したのかもしれませんが,フリークショーで小人症や魚鱗癬の人々を見世物にする文化はさすがに不快感でございました.これは時代が進み人権意識が正しく高まるほどに不快指数が積み増されるわけでして,そういった意味では本作は歴史的価値のある佳作と呼ぶにふさわしいやもしれません.
一方で邦題のヤバさも言及しておかねばなりません.というのも植物人間が登場するのが,尺の残り時間20分になってから.それもポイントポイントでチラチラっとお姿見せるだけ.さらには,元となった人間としての意識は保ったままで無闇矢鱈と人を襲うわけじゃございませんし.その内容で「悪魔の植物人間」という邦題を付けるのは,今で言うタイトル詐欺ってヤツでございましょう.グロくもないし.
というわけで本作は植物人間はおまけで,奇形を見世物にしている文化,そしてそれを許している人々を不快に思う作品と心得たうえでの視聴がよろしいでしょう.ただし重ねてご注意いただけたいのは当時はこれが当たり前だったのですから,今の感覚で排斥するのは大いなる間違えでございます.んなこと言ってたら古典落語なんて半分くらいは披露できなくなりますしお寿司.