猫脳髄

悪魔の植物人間の猫脳髄のレビュー・感想・評価

悪魔の植物人間(1973年製作の映画)
3.7
いや~なかなかいいですね。トッド・ブラウニングの名作を本歌取りしたフリーク・ホラー(※1)。奇形モノは素材が素材だけに作例は多くはないが、本作に登場する実在のフリークスが肝心の「植物人間」以上のインパクトを残してしまった怪作である。

動物と植物の融合による新人類の誕生を目論むドナルド・プレザンス扮するマッド・サイエンティスト(※2)が、サイドショーの親方である「醜男」(※3)を助手に、人体実験用に若者の誘拐を繰り返す。若者たちが仲間の失踪に不安を抱くなか、彼らが訪れたサイドショーで驚異的なフリークたちを目撃し…という筋書き。

肝心のクリーチャー(巨大ハエトリグサにひょっとこがくっついたような造形)には出オチ感が否めない(ライダー怪人にしか見えない)が、主たるストーリーと並行するフリークたちのドラマは、確かにブラウニングの後裔と呼ぶにふさわしい。

サイドショーの「醜男」は自らをフリークとはみなさず、一座を見下して「仲間ではない!」と言い放つ。しかし、世間では忌避され、売春婦にカネを渡して「愛していると言ってくれ…」と頼む悲哀。挙句、虐待したフリークたちに復讐され、壮絶な最期を遂げることになる(※4)。

低予算ながら、センセーショナルなモティーフの選択とシナリオの運びでなかなかの出来に仕上がった佳作である。

※1 脚本サイドからの提案のようで、ジャック・カーディフは「フリークス」(1932)は見ていないそうだ
※2 本作時点でも棄却されていたソ連のルイセンコを信奉するあたり、「あ、キチガイだ」と思わせる。狂人らしい確信に満ちた冷静な演技は見事である。自分の学生を実験台にするとか狂気が過ぎる
※3 トム・ベイカーが特殊メイクを施して演じるが、エレファント・マン然とした風貌で役名が「リンチ」なのは奇妙な偶然である
※4 上述したように、サイドショーのフリークのなかでは唯一特殊メイクを用いている。この意味で、「醜男」は二重に疎外されているのである
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