海苔

フリーダム・ライターズの海苔のレビュー・感想・評価

フリーダム・ライターズ(2007年製作の映画)
4.0
90年代のカリフォルニアの実状を学ぶという意味だけでも見る価値がある作品。お互いの人種を敵とみなしていた生徒たちが、エリンの献身的な教育によって、互いは敵ではなく同じ社会を共有する仲間なのだと気付き、人種の固定観念や反社会的文化から脱却し彼ら自身の人生を歩み始める物語は感動的だ。

一方で、教育について考えさせられる一面もある。エリンの個人に合わせたprogressiveな教育が功を奏したのは紛れもない事実だが、年配の教師たちのtraditionalな教育論にも理はある。エリンのゲームや議論を通じたアクティブラーニングは、数学や理科などアカデミックな座学を学びたい生徒には退屈であるかもしれない。学校や国全体として、カリキュラムに沿った一定の教育水準を保つのにもtraditionalなlecture型の授業の方が効率的だ。また、このエリンの事例を教育の理想として一般化するのも難しい。プライベートを犠牲にしたエリンのような働き方を全ての教師に求めるのは彼らの労働者としての立場を考えれば酷すぎる要求であるし、エリン自身もこのやり方をキャリアの中で新しい生徒に繰り返し続けていけるかについては分からないと答えている。とはいえ様々な要因により学習が遅れている生徒たちへの教育を諦めていいというわけではない。爽やかなサクセスストーリーと共に、教育の難しさを改めて認識させられる良作。
海苔

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