監督高畑勲、製作宮崎駿によるドキュメンタリー。
年明け、チャン・リュル監督「柳川」を鑑賞し感銘を受け、春にはJリーグ鳥栖遠征に託けて柳川の地を訪れる事が出来た。
古い日本の情景が残る観光地は幾つか知っているが、その何処とも違う幽玄な雰囲気と、あたたかい人たちの歓待が心地良かった。また行きたいと思う。そんな中、本作は是非観てみたかった作品。
「風の谷のナウシカ」のヒットを受けて、以前よりドキュメンタリーに興味を持っていた高畑勲監督が手掛ける事が出来た作品との事だが、なるほどテーマも地続きであり、これはセットで鑑賞したい。
近世までは日本各地で見られた深堀。
近代化の中、埋め立てられる事も珍しくなかった深堀がなぜ柳川の地には残る事が出来たのか。
生活汚水などで異臭を放っていた深堀が、また清い流れを、どうして取り戻す事が出来たのか。
人間が自然との"つき合い"の中で長年培ってきた知恵が歴史にはあり、合理性の名の元にそれを一瞬で葬ってしまう過ち。
そして、それを取り戻すための並々ならない覚悟と努力。
30年近くも前の映像には時代性を感じつつも、今なお有効なその視点と、柳川の美しい情景が少なくともこの時代にも未だ尚健在である事の喜びを得た。
1980年代の終わりの高畑勲と宮崎駿の憂慮と希望は令和の時代には全く古びてい無い。
それどころか今最も求められる感覚かもしれない。
