kito

ザ・ライト -エクソシストの真実-のkitoのレビュー・感想・評価

3.8
コレコレ、観たかったのはこっち!

エクソシストが実在するんだからこのくらいの怪異は本当に起こってそうだなあ、という塩梅なのが好ましい。「ヴァチカンのエクソシスト」でラッセル・クロウが演じた実在のローマ教皇直属チーフ・エクソシストの方が格上なのだろうけれど、あそこまで怪異の大盛りだとさすがに白けてしまう。

まず、原題の「The Rite」は「儀式」を意味し、直球で「悪魔祓い」を指すのだろう。

何千回も悪魔祓いをおこなってきた伝説的なエクソシストを演じるアンソニー・ホプキンスの存在感は言うまでもないが、物語は葬儀社の息子で若き神学生の視点で描かれる。その神学生を演じるコリン・オドナヒューは知らない俳優だけど、信仰に対して懐疑的な雰囲気や苦悩を上手く演じている。彼の父親役がルトガー・ハウワーで懐かしい。「ミスト」など多数の映画で顔を見るバイプレイヤーのトビー・ジョーンズも。神学生と同じように懐疑的なジャーナリスト役のアリシー・ブラガも良い感じで、俳優陣がみなそれぞれにハマっている。

で、悪魔に憑依された16歳の妊婦、あまり長くはないけれど熱演だった。この手の映画では悪魔に取り憑かれる役どころはとても重要で、押し並べてみな見応えがある気がする。

オープニング、葬儀屋でのエンバーミング(遺体に殺菌消毒・防腐や修復をした後に化粧を行うことで生前に近い姿に整える処置のこと)のシーンから惹きつけられた。以降の全編が落ち着いた映像で「エクソシスト」や「オーメン」などまだCGのなかった頃のホラーの雰囲気が感じられて好き。ローマでのエクソシストに関する座学シーンなどはきっと本当にあるのだろう、なかなか興味深い。

クライマックスはやはり大御所アンソニー・ホプキンスが圧巻。「羊たちの沈黙」レクター博士に通じるものがあって、もはや彼の ”十八番” と言って良い。

悪魔憑依ではないと判断した際の "なんちゃってお祓い" なエピソードも面白い。穏やかな雰囲気でエンディングを迎え、続くエンドロールを観ながらキリスト教に入信しようかなあなんて気がしてくるような、こないようなーーまあ、さすがにそれはないけれど、八百万の神はより信じたくなった。
kito

kito