52hz

フェーズ6の52hzのレビュー・感想・評価

フェーズ6(2009年製作の映画)
4.2
ウイルスの謎は解けません。
ゾンビもでません。
巨大な陰謀とも戦いません。
誰も救えません。
発生源も対処法も不明のまま、なす術なく終わるパンデミックムービー。

あらすじは完全に低予算のB級映画。
が、個人的には終末系映画やパンデミックもので一番かもしれない。
でもゾンビもの、パニックものが好きな人、派手に戦って欲しい人にはたぶんイマイチ。
ウイルスではなく人間のお話。
極限状況下の人間性を問うような話なので「ウイルス、パンデミック、致死率100%」から想像されるよりだいぶ地味。

主人公たちは知識も何も無く、危機感すら今ひとつ。普通の、何ならちょっとダメな感じの若者たち。
すでに致死率100%のウイルスが蔓延し、終わりかけた世界で彼らが見せる姿は、あまりに生々しい。

パンデミック系の映画には、だいたいヒーローやリーダーがいる。
彼らには技術があったり知識があったり、強かったりして、人類の危機に立ち向かう。
でもこの映画にそういうのは無い。
だって、主人公たちがあまりにも凡人。
ウイルスについての情報など、何にも知らないわからない。
情報源はニュースと噂。

「感染したら必ず死ぬヤバいウイルスのせいで人類がヤバい、自分たちもヤバい。風の噂であっちの方がまだ大丈夫って聞いた。逃げよう」
そんな感じ。

信憑性のないお粗末な情報と、生き残る気あるのか?と問いたくなるお粗末な予防知識と防護策で逃避行。

この「情報がない、あっても自分には正誤の判断がつかない」状況で右往左往する姿は、たぶん現実にパンデミックが生じたら大多数の人間がこうなるんだろうな、と思わされる。

彼らにとって重要なのは、ウイルスの情報よりも目先のこと。
その場しのぎでもいい、助かりたい。
今、何をすれば助かるのか。
我が身かわいさの前では倫理観や情など役に立たない。
致死率100%なら、感染した時点で死体と同じ。連れていたら自分も感染するかもしれない…それなら…。。
…理に適っているし、おそらくそれが最良の選択。
なのにゾッとするのは、理性ではなく本能で選択しているように見えるから。

ウイルスの正体や詳しい病状が結局ほとんど出て来ないのは、意図的なのだろう。
世界を救えない、救ってももらえない人間視点のパンデミック。
馬鹿で無知で身勝手で、逞しくも弱い人々。
52hz

52hz