52hz

ジョーカーの52hzのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.8
これはザ・ノンフィクションじゃないか。

アーサーがジョーカーになるまでの物語。ジョーカーを「怪物」と捉えるのはもう無理だ。

ゴッサムシティの悪のカリスマ、ジョーカーは偶像であり、群衆が祭り上げた象徴であり、中身はごく普通の(あらゆる意味で)恵まれない人間だった。

アーサーは自分を客観的に見る能力にも、そのための環境にも恵まれず、心は病んでいる。
鬱屈した感情はいくつかのきっかけが重なり爆発したら、病んだ心では止められない。

「アーサー」は誰にも顧みられず、疎まれ、蔑まれる透明な存在。
しかし「ジョーカー」であれば良くも悪くも認められ、人々が振り返る。
ならばジョーカーが良い。

とても恐ろしく、そしてあり得うる話だと思う。
アーサーはいたって普通の人であり、彼の様な人はそこら中にいる。
怪物ではなく、あまりに普通の精神を持ち合わせていたために耐えきれなくなった、自分を守る事で精一杯の、高潔でも邪悪でも無いその辺の人だ。

わかりやすく奇声を発し、おかしな事を言い、妙な趣味を持っている=事件を起こすヤバいやつ。
ではない。

アーサー=ジョーカーを格好良いと思うのか、辛く哀れな存在と思うのか。
ゴッサムへ至る分かれ道に思えた。
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