ぶたぶー

ヒトラー 〜最期の12日間〜のぶたぶーのレビュー・感想・評価

ヒトラー 〜最期の12日間〜(2004年製作の映画)
4.2
超有名嘘字幕動画の元ネタだし観ておこうと思って見始めた。結構序盤(30〜40分頃)に例のシーンはあった。イメージとして、あの怒鳴り方はクライマックスかと思っていたので意外だった。それくらい、最初から絶望的な状況だった。

なんとなく、ヒトラーとその周りの人間はやった事の重大さ的に本当の悪役というか、人としての認識を感じていなかったことに気がついた。
映画の中で、彼らは人間だった。

本当に絶望した時は、何も考えたくないし踊りたいし飲みたいし、楽しい時や嬉しい時とやることが変わらないことに奇妙な感覚を覚えた。納得しかなかったけれど。

ヒトラーの役者の演技がすごい。特徴的な喋り方や腕の振り回し方など、本物のようだった。『映画』を超えてきた。

市民や兵士が犠牲になり続けても同情はしないと言うヒトラー。自分の犬が死ぬ時は目を逸らすヒトラー。私生活では他人に結構優しいヒトラー。逃げろと言うヒトラー。死ねと言うヒトラー。

最後に「逃げてくれ、あなたを失ったら我々はどうしたら良いのか」と泣きつかれた時、「ついてきた彼らの自業自得だ」的ヒトラーの発言を思い出した。
自業自得かもしれない。でも夢を見せて連れてきた責任もある。ちゃんと自分の頭で考えないでついてきただけの責任もある。
少なくとも、自分の子供を自分の手で殺すために生きてきたわけじゃない。自分の母親に殺されるために生まれてきたわけじゃない。

戦争に負けて終わるカオスを見た。敵味方はもう関係なかった。全員懸命に生きているのに地獄だった。今思うと、なんでこんなことする意味があるのか、子供を殺す必要もないし生きれば良いのでは?と思わなくもない。奇妙で愚かな選択にも見える。でも、真剣で真面目で懸命に生きている。
自分の信じる事のために自決覚悟で戦う宣言は、最近観たテロの映画を思い出した。すごく怖い。理由も理屈も分かるが、信じることや守るもののために命を捨てる世界は嫌だ。

ヒトラーが「若者の義務だ(戦った死ぬことが)」と言った時の、相手の顔が良かった。信じられないものを見る目が。老人が決めて壮年が命じて若者が死ぬのが戦争って有名だけど、本当だね。泥沼化の上での最期は年齢は関係ないみたいだけど。

衣装がすごくかっこよかった。すごくカッコ良いデザインにして、憧れるシンボルとして人心を集めていたんだろう。

意外と生き残ってる人多かった。飛行士の女性の活躍すごかった。最後のインタビューが心に残った。若さを言い訳にする選択はすごく魅力的だし楽だけど、その後の人生、もしかしたら世界や自分の次の世代を大いに苦しめることを肝に銘じて世の中を生きていきたい。