観ながら何度ももうこの国はダメだよ…もうこのジジイはダメだよ…となった。しきりに手を震わせ、ボサボサの髪を簾のように垂らし、背を丸めながら肉のない食事を少しずつ口に運ぶヒトラーはどう見ても老人としか思えなかったが、1945年時点で56歳だったとのことで驚く。
自暴自棄になる男たち、盲信を続けようとする女たち、その中で高貴に振る舞おうとするエヴァ・ブラウンの異様さ異質さが印象的だった。幼稚だったのか、達観していたのか。実際のエヴァがどうであったのかについても知りたくなった。
熱烈なナチ党員ではなかったが、家族の反対も押し切って秘書になってしまった、その原動力が好奇心であったというユンゲの述懐は、それが本当であれば恐ろしい。
最後に登場人物のその後についてもまとめられている。大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』の副教材としても良い。