Toineの感想文

柔らかい殻のToineの感想文のレビュー・感想・評価

柔らかい殻(1990年製作の映画)
4.5
【剥き出しの人間の腹の中】
まるで本を読んでいるような気持ちになる素晴らしい映画だなあと思いながら調べたら、脚本と監督を手掛けたフィリップ・リドリーさんは作家なのですね。

1950年代の田舎の美しい風景が、自己中心的な大人たちの汚さとの対比になっていて、より陰惨さが引き立っていました。

きっとリドリーさんは、この作品の主人公のように人の裏の顔を見抜ける人物なのでしょう。

過酷な幼少期の悲しみを素晴らしい芸術に昇華する監督の強さと才能を尊敬します。
この作品は自伝でもあると思うのです。

兄を救いたかっただけなのに自分のせいで取り返しがつかなくなった事に気が付き、ついに"柔らかい殻"="心"が破れてしまった。

破れた心=彼は壊れてしまった。

原題は「The Reflecting(反射する、反響する) skin」なので、やはりラストシーンの後、彼はきっとそこに住む大人たちと同じように罪を背負い歪みを抱えて生きていくのだろうなと。
そう解釈いたしました。