じろー

ターミナルのじろーのレビュー・感想・評価

ターミナル(2004年製作の映画)
4.2
古きアメリカ映画の中に隠したスピルバーグのアメリカ社会への抵抗。
スピルバーグは社会や政治をさりげなく表現するのがうまい。

クーデターによって故郷が戦火に包まれる中、そのニュースを見たトムハンクスは孤独に立ちすくむ。一方、周りには無関心な人々が足早に過ぎるだけ。
権力を持つ保安局は道徳的規範ではなく規律やシステムによって動き、後ろ暗い過去を持つ人物が人間性を強く宿している。
法の穴に抜け落ちた主人公はシステムの枠組みに入ることができず、管理ができないある種の危険因子である。

2001年の9.11以降愛国者法により民衆の監視は強化されていた。監視カメラ、盗聴、突然の逮捕など当時のアメリカはそれまでと大きく変わっていった。
息苦しい当時の社会を規律によって管理された空港という場所に当て嵌めながら、古きアメリカ映画が描いたユーモアと人情を大事にする人々という「アメリカ的人」を描こうとした。
「自由なき世界で自由に生きようとする」そういう映画。
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