岡香里

イントゥ・ザ・ワイルドの岡香里のレビュー・感想・評価

イントゥ・ザ・ワイルド(2007年製作の映画)
4.5
自然の写し方や、火や水や光を使った表現がすごく綺麗だった。
音楽もすごく良かった。

旅をしている主人公の、純粋な自由に対する喜びの表現や、探究心に輝いている瞳がとても印象的だった。
とても繊細で意思の強い主人公だけれど、目標に対してストイックな良さの反面、何かを許せずとらわれてしまい、散りばめられた小さな幸せにシフトできない不器用さ、怖いもの知らずな若さも感じる。
妹のナレーションは、主人公への深い理解と愛情が心に響く。

内容は、かなり哲学的だった。
映画を観た後は、人間って何かと考え、終盤に出てくる言葉『Happiness only real when shared』が答えになった。
人間でいるからこその文明の進化への適応や社会や人間関係を疎ましく感じる事があるし、主人公の様に自給自足で生活したいと思う事がある。
だけど、人間は動物と同じには生きられない。
感情や社会性などの高度な機能を持っているから。
自然は感情を持たないし、形を変えながらも常にそこにあり続ける絶対的なもの。
自然は自然として、それぞれが自立し、生き残るために様々な能力を持つ。
そこに安心感は感じられても、共感はできない。
人間は一人では生きられない。そして幸せや、生きる意味を求めて生きるもの。
感じる幸せは人との関係で生まれたり、共有するからこそ幸せ。
上手く自然や社会を利用し、時には苦しめられながらも幸せを共有できる人と生きる事が良いのだろうと思うけれども難しい。
自分がなんだかわからない時、全てを捨てて孤独になる事はきっと、一番自分を知る事になるのだろうとも感じた。

最後は自然の恐ろしさを感じるにもかかわらず、美しい自然に触れたいと思う図太く、探究心に満ちた気持ちもあり、不思議と清々しさも感じる映画。
これから先、何度も観たくなるだろうと思う作品。
岡香里

岡香里