ひかっと

かぞくのくにのひかっとのレビュー・感想・評価

かぞくのくに(2012年製作の映画)
4.0
学生の頃、社会学を専攻していたこともあり、在日朝鮮人の受けた差別やヘイトスピーチの問題を学んだことがあった。
それがきっかけでこの映画を観たが、実話であることが受け入れ難く、観たことを忘れたくなった。
そんな自分に失望して、記者やジャーナリストを目指すことをやめた。

大人になって大抵の物事と冷静な距離を取れるようになった今、ヤン・ヨンヒ監督のドキュメンタリー作品を観て、やっとこの映画の感想を記録したいと思った。


「それ持って色んな国へ行け」

兄からスーツケースを指差しながらそんなことを言われたリエは、兄の分まで生きようとするのだろうか?
誰かの分まで生きなくてはいけない人生の重さはいかほどか。

恨むことも、憎むことも、羨むことも気力がいるからだろうか、お兄ちゃんの顔にはそのどれも見られず、ただ静かに、時折揺らぎが見えつつも流れに身を任せているようだった。

この映画を観ている観客以外、劇中の誰にも後悔を口にすることは許されない気がした。
後悔したら、気づいたら、考えてしまったら、もう生きてはいけないから。
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