湯っ子

昭和歌謡大全集の湯っ子のレビュー・感想・評価

昭和歌謡大全集(2002年製作の映画)
3.6
ニートっていう言葉が使われ出したのは、この映画や原作がリリースされた頃からみたい。ある意味、時代を象徴する彼らと、おばさんたち(とは言っても演じるのはみんな美人女優)が殺し合いをするというシュールなブラックコメディ。

それまでどこか空虚だった彼ら彼女らが、復讐合戦というイベントを経て生きる熱気みたいなものを得る。殺し合いバトルの末の顛末は「太陽を盗んだ男」を連想させるが、無気力な化学教師を演じるジュリーが執着した存在が、職務に身を捧げる心身ともに強靭な男だったのに対し、本作のニートの若者たちが滅ぼしたいと熱望するのが「イトーヨーカドーで買ったみたいな服じゃなくてブティックで買ったような服を着てる、大きいガラス窓のあるレストランでキノコのスパゲッティ食べてる、カラオケとかスイミングクラブに通ってるおばさん」。
70年代のジュリーが焦がれ憎むのが「清く正しく美しく強い男」なのに対し、2000年代のニートたちが妬み憎むのが「呑気で図々しくてなんかチャラチャラ楽しそうにしてるおばさん」なのが、時代を感じるな。
湯っ子

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