昼行灯

コックと泥棒、その妻と愛人の昼行灯のレビュー・感想・評価

3.9
めちゃおもろいですわ
抑圧された女の復讐劇って西洋がやるとこんな感じになるのねって感じ。だからラストの復讐はそれ復讐になるの?って思った。東洋で女が復讐するならやっぱり怪異的な力を何らかの形で得ないといけないと思うけど、ジョージーナはコックを味方につけている。コックがなぜ味方になるかというと、彼もまたアルバートに辟易してるわけで、これは彼の復讐でもあったわけだ。この共闘が恋愛関係とは別のところで起こっているのがなんとも不思議な感じ。日本だと心中というかたちになると思うので、、

てかコックはジョージーナを抑圧から解放したくて、逢引を手伝ったことからして、言い過ぎかもだが彼女は彼にとってのアニマの具現化?だったりして。この映画だと生と死が直結してるように生の営み(セックス)と死の営み(調理)も繋がってるから、2人は鏡像同士というか、、でもそうなってくると愛人の存在が希薄すぎるんよねえ。アルバートと愛人がバカと知性の両極端なのはあると思うけど、コックとアルバートも生産者と消費者という対極にあるし、わかりやすい物語ではあるけど、がんじがらめな人間関係。

ミザンセヌも素晴らしかった。名画がレストランの壁と外側に掛けられていたけど、これは自警団を描いたものらしい。その自警団たちと同じ衣装を着ていることから、このレストランが泥棒の支配下にある無法地帯であることが示唆されているのかなと思った。と同時に、ラストまで見るとレストランの職員が団結してレストランの治安を取り戻すということを示しているようにも思える。あと、極度の一点透視図法的な構図は最後の晩餐を思わせもする(安直かもしれないけど)。この絵も生と死が背中合わせにあることを描いた作品だなと。
照明にかんしても、コントラストが強めで演劇のステージのようなレストランだなと思った。部屋によって照明の色が分けられていて、赤が負の欲望や悪、緑が安心というか自由、黒が死を表しているのかな。照明の色の変化に伴って服の色が変わるのも贅沢でよかった。そういう表現主義的な演出から、このレストランは実際にレストランだったのではなく、家父長制における支配とそれに対する争闘を具象化したものなのかなと思ったりもする。

当然の事ながらゴルチエの衣装も素晴らしい。官能的でありつつも紳士淑女なスタイルがこの欲望渦巻く高級レストランの有り様にあっていた。
カメラの横へのゆるやかな移動ショットも広々としたレストランを贅沢に映していたし、レストランの厨房とホールが地続きなんだという印象もあった。ラストはホールにいる人間たちをバストショットかフルショットで映すことが多くて、状況が一転して緊迫感が漂ってることがよく表れていたし、厨房サイドの一致団結感もすごかった
昼行灯

昼行灯