あいの

ある結婚の風景のあいののレビュー・感想・評価

ある結婚の風景(1974年製作の映画)
4.0
オリジナル版ってやつを購入したんだけど他に何版があるんだろう?
元々はテレビドラマだったのを映画にしたらしい本作。ひたすら会話が続くので単調といえばそうだし劇的だったり突出した映像美があるわけでもない。でもやっぱベルイマンはすごかった。
10年連れ添った夫が突然愛人ができたと言って妻と子供を置いて去っていく。信じられないくらい酷い話だけど、そこに憤慨しているうちに劇中では月日が半年一年と過ぎて、夫は妻の元に戻ってきたりやっぱり離れたり離婚したりまた再会したりする。妻は呆然としたり反発したり乗り越えたり再婚したり情にほだされたりする。そこに苦しみや怒りや心の傷は確かにあっても「罪」はないし「罰」もない、外野もほとんどいない。ただ1人の男と1人の女の心が近づいたり離れたりするだけ。こんな不倫映画は初めてだった!私の好きな不倫映画の一つに邦画の「昼顔」があるんだけど、真逆のような作品。「不倫もの」に厳しく非難する外野は、社会的制裁は、罪の意識は、罰の意識は本当にいるんだろうか?狂気はいるのだろうか?と問いかけられているような気がした。そもそもベルイマンは倫理に興味がないと思う。人と人との結びつきも愛情もあまりに儚い、胸が苦しくなるけれど、他人や倫理を気にしなければ私たちはもっと先の世界を知れるのではないか?
夫婦同士の感情とかには思い当たる部分も当たらない部分もあって、将来こんなふうになったらどうしようとか冷静に見れないところも山ほどあって、でもわたしにとってとても刺激的な作品でした。愛の映画です
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