ある結婚の風景の作品情報・感想・評価

ある結婚の風景1974年製作の映画)

SCENER UR ETT AKTENSKAP

上映日:1981年03月07日

製作国:

上映時間:293分

ジャンル:

3.9

「ある結婚の風景」に投稿された感想・評価

echo

echoの感想・評価

4.2
自分の愛人だったリヴ・ウルマンを主役に徹底的に結婚・夫婦、愛について描くってエグいおひとですね。
一幕ごとに微妙に変化する2人の関係性が面白い。特に終盤にかけての辛さを乗り越える為に進化を遂げてしまった女と、辛さを受け入れて進化をとめた男の平行線の掛け合いは最高!
Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

4.5
「ある結婚の風景」

〜最初に一言、ベルイマンによる夫婦の壮絶な性的、精神的格闘の様子を提示した離婚ドラマの傑作だ〜

冒頭、緑のカウチに座る夫婦。それを固定ショットするカメラ、反対側には女記者。2人に質問、友人夫妻との晩餐、愚痴と不満、愛人がいるとの告白、喧嘩、劇、食事、ブランデー、離婚。今、夫婦の壮絶な精神的格闘が映し出される…本作は1974年にラース・オウェ・カールズベルイが製作した当初スウェーデン国営放送のもとで各50分6エピソード全5時間のTVシリーズとして企画・製作されたものを巨匠イングマール・ベルイマンが監督を務め、撮影はスヴェン・ニクヴィスト、音楽はオーヴェ・スヴェンソンの面々で取り組んだある一組の夫婦の結婚と離婚を描いた傑作である。この度、BDを購入して久々に再鑑賞したが凄い映画だ。

さて、物語は結婚10年目を迎えようとしていたユーハンとマリアンは、地元の新聞社からの取材を受けた。夫婦関係について語るマリアン。だが、それらの言葉が活字になった時、何か空虚なものを感じてしまう。友人夫婦との食事の後、2人は何かが決定的に狂い始めていることに気づくのだが、それは次第に取り返しのつかないものへとなっていった。
 
第一部… "無邪気さとパニック"


本作は冒頭に慌ただしく新聞記者にあーだこーだと指示され質問される夫婦のファースト・ショットで始まる。ここは夫婦のリビングであろうか、ブロンドの記者が色々と2人に難しい質問を言う。まず最初に子供たちがその場からいなくなり、夫が質問に対して口を開く。話をしているうちに夫婦の関係や様々な事柄がわかってくる。まず娘の名前はカリーンとエヴァで、夫は42歳、妻は35歳である。義父は医者をやっているようだ。典型的な中流家庭出身で、妻は7人兄弟の末っ子で父と同じ弁護士に。そして2人とも実家とは仲が良いらしく、喧嘩もなくしょっちゅう会う中だそうだ。

続いて、記者の女性は仕事関係の話をする。夫は心理学者研究の教授だ。それで充分だろうと言う。妻は法律事務所で家族法が専門で主に離婚問題を担当していると言う。ここで不意に記者が妻に対して動かないでいい表情だと言い、カメラのシャッター音が聞こえる。2人は少しわかり動揺する。続いて2人の出会いを聞く記者。そして淡々と質問が繰り返され、答えが返ってくる固定ショットが写し出される。

続いて、子供たちが歯医者を嫌がるかもしれないからと一旦妻はその場から立ち去る。夫と記者が引き続き会話をする。次に夫が席を立ち、記者が1人リビングで待つことになるが、好奇心で彼女は夫婦の寝室を覗いてしまう。そこでは乱雑に置かれたスリッパや掃除がされてないベッドがある。途端に妻が戻ってくる扉の音を聞いて慌てて席に戻る女記者。妻がソファーに座り2人は改めて会話をする。

続いて、映画開始16分が経った頃、友人夫妻とのディナーを楽しむショットへと変わる。ユーハン(夫)が何やら本を声に出して朗読している。一同会話をしながら笑う。友人夫妻が少しばかり愚痴を言い始め空気が悪くなったため、ソファーの部屋でコーヒーでも飲もうとユーハンが言い、一同全員移り変わる。だが、男は男同士でと友人の夫妻の奥さんがいい、2人は葉巻を吸いながらチェスをする。

一方で、マリアンとその友人の女性は化粧室で心配事を色々と話す。別居したらなどを色々と勧めるが、2人でイタリアに出張するからできないと言われる。カタリナ(友人の奥さんの名前)はタバコを吸う。そして改めて4人は違う居間で話をする。ここでカタリナが夫のピーターに強烈な不満をぶちまける(いろいろな展開があるが、ネタバレになる恐れがあるのでここでは言及しない)。

続いて、食器などを片付けている夫婦が互いに他の人とセックスとかしたくないのかと話をする。カットは変わり、真っ白な寝室のベッドにメガネをかけた夫妻が本を手に読みながら会話をし始める。それを正面から固定ショットするカメラ、 3人目の子供を産んで欲しいかと言い、夫は3人目も悪くないと言う。どうやら旅行先でピルを飲み忘れ妊娠してしまったことを夫に告白したそうだ。夫はわざとかと問い詰める。妻はもし妊娠したらそれが運命だろうと考えたと言う。

妊娠の話は終わったが、徐に妻が泣き出してしまう。マリアンが子供について深く考えてしまう妻に対して、あまり深く考えない方がいいとアドバイスをする。続いて、野外の風景に変わる。夫がスーツ姿で入院中の妻の元へやってくる。病室で妻がベッドを下げてくれと頼み、夫がそうする。どうやら明日退院するようだ。夫は妻に休みを取るから2人で田舎に行かないかと提案する。妻は微笑みながら楽しそうと言う。だが、急展開して妻は泣き始める(ネタバレになるため伏せる)。

続いて、美しい夕暮れの空のショットの中、「ある結婚の風景」第一部、無邪気さとパニックでしたと言う文章が写し出される。そして出演者やスタッフの名前が読み上げられる(50分を過ぎた頃)。カメラはゆっくりと夕映を撮るカメラを後退させる。そしてフェイドアウトし物語が一旦終わる。

第二部へ… "じゅうたんの下を掃除する方法"

あの地獄のような決断から数日後(決断と言うのはネタバレになるため言及していない)。目覚まし音で目を覚ましたマリアン。新聞を手に取りベッドの上で寝ているユーハンに投げつけておはようと言う。夫は眼鏡をかけて新聞を読みながら妻は朝の運動して会話をする。妻は化粧水を顔に塗り、夫はヒゲを剃る。2人は朝食をとり出かける支度をする。マリアンが緊張しながらも母親に電話をする。どうやら日曜日に会う約束をしているようだ。

続いて、家を出るマリアン。ここで初めて夫婦の家の外見が写し出されて車が判明する。夫婦は一緒に出勤する。だが旦那は習慣を変えたくなかったようで少しばかりため息をつく。妻のほうはたまには一緒に行きましょうと楽しげだ。車内で会話(この時、カメラは斜め後ろから2人のクローズアップを映す)。目的地に到着した妻はその場で車を降りる。後に劇場で会いましょうと言う。

続いて、ユーハンの研究所にカメラは映る。そこに1本の電話がかかってくる。それはマリアンの母からだ。ユーハンは彼女について話をする。そこへ偵察しに来たと言う眼鏡をかけた研究者の同僚と思われる女性がやってくる。黒を基調にした研究室で2人は長々と実験や会話をする。続いて、マリアンの弁護事務所へと変わる。ここではパステルカラー(黄色)を基調にした部屋作りになっている。1人の年老いた女性が離婚したいと相談してくる。

マリアンは離婚理由を聞く。そうすると愛がないからと答える。夫は優しくて暴力も振るわないし、広いアパートや別荘もあって不満はないが夫には愛がないと言う。夫には15年前に愛情がないから別れましょうと言ったそうだ。夫は子供が成長するまで待ってくれと言う。そして今この時が来たと語る。カットは変わり、夫婦がレストランでコーヒーを飲みながら旅行パンフレットを見て日本にいきましょうと言う。

劇場から帰ってきた夫婦は食事の用意をして、劇の感想言いながら食べる。そして夫婦の深刻(セックスに対して)な会話をする。2人がベッドに入り電気を消して第二部が終わるナレーションが流れる。ファーロ島の風景とともにスタッフ、キャストの名前が読み上げられる。カメラは岩を捉え、徐々にカメラを交代させ夕日を捉える全体風景が写し出される。

第三部へ… "ポーラ"

マリアンが散らかした部屋を掃除しなさいと娘たちに言う(娘の姿は出てこない)。そして寝なさいと言う。彼女は2階から下に降りて、冷蔵庫の中の食品を手に持ちお酒と共に食べようとするが、思い悩んでもう一度冷蔵庫にしまいトマトを1つとって口にくわえながら寝室へやってくる。そして眼鏡をかけてベッドの上で読書をする。そうするとそのまま寝込んでしまう。

カットは変わり、1台の車が自宅(別荘)へと帰ってくる。ユーハンだ。どうやら明日まで帰ってこないと思っていたマリアンが喜ぶ。ここでダイエット中と言う言葉が出てくるため、先程の冷蔵庫の件はダイエットをする為との事がわかる。彼女は食事を作り夫とテーブルの上で食べながら会話をする。 マリアンは一方的に話をするが、夫はどうにも暗く反応しない。ここで夫が大事な話があると言う。それは好きな女がいるとのことだ。どうやら会議で出会った通訳の若い女性のことが好きになったそうだ。マリアンは全然知らなかった、どんどん良い方向になっていると思っていた自分が馬鹿みたいと嘆く。

ユーハンは君と子供たちに申し訳ないと言う。マリアンは私と離婚してその女と結婚するのと聞く。夫は明日パリに立つと言う。それに驚くマリアンのクローズアップの表情、どうやらポーラ(若い女の名前)が奨学金で旅立つそうで、離れたくないから行くとの事である。彼女は意気消沈して寝ましょうといい台所に行き食器を戻し電気を暗くして去る。部屋に戻った彼女は夫が着替えている姿を見て、キスマークがある事に言及する。

ベッドで夫が4年前から別居を考えていたことを告白し、妻は驚く。そして仕事を辞めて海外へ行く夫の話を聞いて、子供たちの養育費をどうやって支払のと言い、ユーハンは何とかすると言い、いきなり読んでいた本を投げて声を大きくしてマリアンに怒鳴り語り始める。今までのマリアンに対しての不満をぶつけた瞬間だ。マリアンはポーラの話をして欲しいとユーハンに言う。最初は嫌がっていたが、徐々に話をし始める。

続いて、黒海に行った時の彼女の写真を財布から取り出してマリアに見せる。どうやら23歳で胸も大きくて彼女はマリアンにとっては美しく見えたようだ。重い夫からの話に嘆く彼女は最後に夫と2人でベッドの上で激しく接吻し抱き合い泣く。夫も自分が情けないと言い泣き始める。妻は一生懸命夫の頭を撫でて額にキスをする。カメラは静かにフェードアウトする。次のカットでは夫婦が両手を握っているショットで始まる(この時、時計の秒針が聞こえる)。静かに目を覚ますマリアン、目覚まし時計を止める。ユーハンも起きて軽く抱き合う。

夫婦は洗面所にいる。シャワールームで体を洗うユーハン。マリアンは髪をとかし、夫は体をタオルで拭く。爪が割れたと言いマリアンに処置してもらう。そして夫の荷造りを手伝う妻、服に着替えるユーハンが写し出される。そして朝食をとり、いざ夫が出て行こうとすると妻は夫を離さない。必ず戻ってきて希望を与えてと言う。夫はいやいや離れ、外に出て車に乗って去る。それを扉の小窓から覗くマリアン、沈黙が続く。

彼女はベッドに再度戻り、布団で頭を覆い、いてもたっても入られない状態になる。そしてフレードリックに電話をする。ビルギットはいるかと聞くが寝ているならいいと言う。そして会話が始まる。彼女は友達に夫が愛人ができてパリに行ってしまうから説得してほしいと頼む。だが、この話を知っていたようで黙っていたことに激怒するマリアン。嘆きながら受話器を投げ捨てる。カメラはひたすら彼女のクローズアップを捉える。

そして「ある結婚の風景」第三部"ポーラ"でしたと言うナレーションが流れ、灯台が見える海岸の固定ショットでスタッフ、キャストが紹介される。

第四部… "谷の涙"

チャイムが鳴り、マリアンが扉を開けると彼女は笑顔になる。どうぞと言い入ってきたのは夫のユーハンで、彼女が着ていたブラウスを褒める。彼女はポーラは?と聞くとロンドンだと言う。何か飲むと聞きウイスキーがいいと夫は言う。子供たちは叔母のところに泊まっていて、すごく楽しく過ごしているとマリアンは伝える。2人の誕生日だけはもう忘れないで言う。そして説教垂れるなら家を出ると夫がイライラモードになる。長らく固定ショットで会話が聞かれる。

続いて、彼女はダブルベットからシングルに変えたと夫に寝室を見せる(寝室の描写は無い)。そしてテーブルでコーヒーを飲みながら語り始める。マリアンは書き留めたノートをユーハンに読もうとするが、夫が彼女にキスをし床に寝転ぶ。そして2人はブランデーをー口飲み、彼女がノートの気持ちを読み始める(この時、モノクロの幼い時の自分の写真が映し出され語られる)。

続いて、途中で夫がソファーで寝てしまったため読むのをやめるマリアン。あと片付けをしようとした時に電話が鳴る。彼女は話す。明日の夜食事をしながら映画でも見ようと言う趣旨の話をする。どうやら彼女の新しい恋人のようだ。いろいろと彼氏は気になるようで彼女に話を聞こうとするが、今はダメと言い電話を切る。彼女はリビングに戻り、寝ているユーハンの横に座る(優しく微笑み彼に触る)。そうすると彼が目を覚ます。

彼は怒らないで続きを読んでくれと言う。マリアンはもう帰りなさいと伝える。怒ったりはしていないわと言い、夫は帰るよと言う。そして彼は一度コートを着て扉から出て行こうとするが、やはり戻ってきて2人は抱き合う。今日は泊まっていってと妻が言い、彼はそうするよと言う。2人はリビングの方へと行く。そのままパジャマを着て2人は寝室のベッドに行くが、彼女の彼氏から電話がかかってくる。嫌々マリアンは電話に出る。

彼女は別れよう、もう二度と電話してこないでと強い語尾で電話を切る。そして夫と2人で笑う。そして彼女はベッドに入る夫に飛び掛かり、別れるのはやめましょう私たちならきっとやり直せると泣きながら懇願する。それを黙って聞くユーハン。ごめんなさい泣いたりしてとマリアンは言う。翌朝、ベッドから目覚める2人。夫はダメだここにはいられない帰ると支度をする。そしてマリアンは夫にポーラからの手紙を渡す。そしてここで朗読してほしいと言う彼は読み始める(どうやらポーラからマリアン宛に手紙が送られていたそうだ)。そして第四部が終わると言うナレーションが始まり、ウルマン演じるマリアンの表情のアップと水たまりにポツポツと雨が降る描写が写し出される。

第五部… "無知な者たち"

結局距離を縮めることができなかった2人、ユーハンは出ていき、マリアンはまた1人になる。殺風景な仕事場のようなところで夫婦2人が書類に目を通している。どうやら離婚を進めるための共用財産のリストの分割の取り決めやサインが必要な書類を見ているようだ。ユーゲマンのパリ公演の戦利品と言うブランデーをグラスに注ぐユーハン、彼はどうやら風邪をひいているようで風邪に効くようだ。マリアンには新しく好きな人ができたそうだ。そして離婚前夜の床での夫婦のいちゃつきが写し出される。

続いて、 2人はまたテーブル越しに見つめ合い互いの不満をぶつけ合う。やがて一旦落ち着き2人はソファーに座り手を繋ぎゆっくりと会話をする。だが、会話の中でイライラが始まり、ついに夫は妻に暴力をふるい、妻も夫にやり返し取っ組み合いの喧嘩になる。マリアンは鼻から血を流すが、夫はお構いなしに蹴る。彼女が部屋から出て行くとユーハンは泣く。そして静かにマリアンが戻ってきて紙に何かを書くと第五部が終わったことを知らせるナレーションが始まり、映像は荒涼とした風景をショットする。

第六部(最終)… "夜中のサマーハウスで"

互いの恨みをぶつけ合って、勢いで離婚届にサインをしたマリアン。研究所では屈辱的なことを言われ、ポーラとの生活にも嫌気をさし全てを失ったユーハンが前作では映し出された。マリアンが車から降りてきて母親の家やってくる。2人は紅茶を飲み会話をする。マリアンは母親に対し、父親とのベッドの経験や違う男との恋、離婚しようと思ったかなど様々なことを聞く。話を聞き終わるとマリアンは帰る。カメラは母親の悲しげな表情を数秒間捉える。

カットは変わり、ユーハンの仕事場が映る。そこにタバコを吸いながら研究者の同僚の女性が内輪でのパーティをやるからどうと誘う。ユーハンはレポートを仕上げなくてはいけないからと構うことができないと言う。女は大丈夫、邪魔はしないと言う。そして彼女は帰る。そうすると、新たに男性がやってくる。男性が帰ったら今度は先程の女性がまた戻ってくる。

カットは変わり、野外にいるマリアンを空撮するカメラ、街の風景が捉えられる。車から降りてきたユーハンと待ち合わせし一緒に車に乗る。彼女はワクワクしているようで、車の中で楽しげに夫と話をする。2人は数年ぶりに別荘にやってくる。2人はベッドに横たわり会話をする。カメラは2人のクローズアップを撮る。2人は近場の海岸沿いにやってくる。ログハウスのようなところに辿り着き、中に入り掃除をする。

そしてマリアンが悪夢を見たとのことでベッドから起き上がり怯える。夫は懸命に彼女をなだめる。そしてサマーハウスでの夫婦水入らずの小さなバカンスが始まるのである。今年は結婚20周年の年である…と簡単に説明するとこんな感じで、ベルマンによる夫婦の亀裂や危機に迫るドラマで、彼自身5度にわたる結婚や愛人関係を持つ中で夫婦と言うものは何か、常に横たわる問題を徹底した対話劇の中に浮き彫りにさせた傑作である。いわば徹底した対話が導き出す夫婦の肖像を濃密なドラマで映した鋭い1本だ。

結果、母国では離婚率が急増したそうだ。ちなみに同じ年に「魔笛」を撮っている。

この作品はテレビ番組の1時間枠6回分を使って放送されるよう構成されており、テレビでの放送後、およそ3時間弱に再編集され劇場公開をしたそうだ。日本では1981年3月に封切られたそうだ。それにしてもこの作品のセリフの量は半端がない。役者2人が気の毒で仕方がない。こんな台本を覚えるのは並大抵のことではないだろう。多分アドリブなどベルイマンは許してくれなさそうだし、そもそも一見幸福に見える夫婦の関係が実は崩れていると言う中年期に差し掛かった2人が結婚生活を再確認していくと言う話は一見ありきたりなようだが、ここはベルイマン映画…一味違う。

何が違うって、先ほども言ったように5時間にわたる作品の中でほとんどが対話場面で占めているからだ。それにワンショットの持続時間がとんでもなく長い。要するにタルコフスキーのような、アンゲロプロスのような長回し撮影によって夫婦の細やかな会話が前面に押し出される。ふとカットが変わると、そこには日常生活の様々な要素が写し出される演出になっている。

私自身どちらかと言うとモノローグの映画の方が好きなのだが、ベルイマンの「秋のソナタ」同様に彼の作り出すダイアローグはとんでもなく好きである。この作品は確か今は懐かしいエキプ・ド・シネマ第39回ロードショーで岩波ホールで上映されていたと思う。その時の第5部と第6部のタイトルが若干違ったような気がした。まぁどうでも良い話だが。どうでも良い話といえばもう一つあるのだが、スウェーデン映画特有と言うのかあまり野外でのショットがないように感じる。これはきっと経度が高く、冬は日照時間が短すぎて映画の野外撮影は非能率って特殊な事情があるのかなとずっと思っている。

結婚しては離婚する映画をたくさん見ているわけでもないし、自分が結婚しているわけでもないので、この作品のストーリーがありがちなのか…もしくは極めて稀なケースなのかはよくわからないのだが、もしありふれている出来事を語っているとするならば、結婚と言うのは何とも言い難いものである。だって、模範的な夫婦像が冒頭に映し出され、中盤から離婚問題と発展し、別れると思いきや密通する有様だ。なぜにきっぱりと別れられないのか…個人的には不思議である。

もともとベルイマンが演劇の演出家である事は知っていたが、やはり再度この作品を見て思う事は、膨大なセリフを役者に与え、ほとんど出ずっぱりの彼らから目を離すことができないような演出をしている。特に主演の2人は圧倒的に芝居が上手く、魅了されてしまう。目を離すことができないと言うよりかフレームいっぱいに、彼らのクローズアップが8割型映画を通して映されるので、観客はいやがおうでも彼らを集中的に見てしまうのである。そもそも5分の3以上はデカローグである。

そのため演劇を見ているような錯覚にも陥る。普通映画を見ていて演劇を見ているような錯覚には絶対に陥らない。そこがこの映画の凄いポイントの1つである。そもそも離婚を主題にした映画だけで5時間もあり、なおかつ現代の社会問題として真っ先に挙げられる深刻な事柄をほぼ2人だけと言う出演者で演出したベルイマンの頭のイカれっぷりがやばいのである。ベルイマン自体も離婚経験が何度もあるため色々と自分の思いを作品に込めているのは見ていて分かるが、室内劇の形式で描く題材としてはあまりにも長いと感じる。

だがそれが逆にリアルに感じてしまうのだ。実際5時間しか見ていないが、5時間以上この夫婦を見続けた錯覚に陥ってしまうのだ。なので5時間映画だが実質的にはそれ以上に長く感じたのだ(個人の感想)。ところでこの映画の夫はあまりにもひどい人間性である。突如愛人ができたと妻に別れを申し出るが、結局は彼女の肉体が欲しくなりまたその快楽を手にしようとする。こういった最低な男を映し出している。この場合、その夫がベルイマンに当てはまるとしたら、自分のことをこういう男だと思っていたのだろうか…気になるところである。

それにしてもベルイマンの映画って顔の大写で全てのドラマをぶちこむ心理主義があって誠に凄いと思う。近写的手法の全てを凌駕するような彼のテクニックに拍手を送りたいものだ。結婚の危うさがにじみ出るほど伝わる1本だ。最後にジョン・カサヴェテスの「フェイシズ」や「こわれゆく女」を久々に見たくなってしまった。この作品との類似点が多くあると思う。それと、ベルイマンの遺作である「サラバンド」に本作の主演夫婦のウルマンとヨセフソンを同じ立ち位置で演じさせているのだが、果たして続編と言う見方でいいのだろうか…てか、改めてこの作品を見てその映画の役名も同じだったと言うことを気づかされた。でもきっと続編じゃないんだろうな…。

このレビューはネタバレを含みます

TV用映画で全6章から成る5時間弱の長編。ベルイマンらしい徹底的に夫婦の愛とはを追及した作品、画面の殆ど9割以上がこの1組の夫婦の会話。結婚10年、42才の心理学教授の夫ユーハン(E・ヨセフソン)と35才離婚専門弁護士の妻マリアン(L・ウルマン)、金も地位もあり誰もが羨むオシドリ夫婦。友人夫妻の痴話喧嘩や老年女性の熟年離婚相談など他人事だと思っていたが、ある日夫が家を出ると突然言いだす、4年前から若き教え子と出来ていて、ずっと別居を考えてきたとの告白に狼狽え狂乱する妻。一方的に出て行った夫だが数年後帰ってくる、若い愛人に翻弄され疲れ果てた様子、平静な生活を取り戻した妻には新しいパートナーがいる。2人はやり直せるのか、お互い愛情と未練は残っている、会話が続く、しかし肝心な時には核心の問題を封じ込め絨毯の下に隠してしまい結論は出ない。又数年間、夫は大学での栄達は閉ざされ野心や刺々しさは無くなりやっと離婚が整う。お互い新しいパートナーとの生活を開始し、束縛が解け自由な気持ちで話せる2人の密会で幕を閉じるなんとも長き紆余曲折ストーリー。若い世代にはこの長さは付いていけないと思う、口に出せない本音や相手を傷つけたくない思いが解る世代にはこの会話劇がそんなに長くは感じられないのでは。際限のない愛の深さをどこまで追い求めるのが理想なのか考えさせる一編でした。適度な距離、適度な放任が私の理想です。
要再鑑賞
ラストの表情

壊れた電話で長距離通話してるような夫婦
2本の録音テープのような夫婦
すべて灰色の世界に薄れていくみたい
うんざりだ
「舞台劇みたいな映画」
という直感だったけど、調べたら、イングマール・ベルイマンが映画と舞台劇の違いを話したときにわざわざこの映画を例として挙げたみたい。
五時間もの。テレビドラマ50分×6回のオリジナル版で、映画版二時間ものもあるらしいです。
幸せにみえた夫婦に亀裂が入り、別れ、また再会し、というプロセスをほとんど夫婦二人の会話だけで進行します。
男はいつも逃げ、女は正面から向き合うという、誰にでも起こりうる一般的な話だったので、言葉の一つ一つにうなづくことばかり。あっという間の五時間でした。
このテレビドラマが終わって、スウェーデンの離婚率が急激に上がったそうです。
masa

masaの感想・評価

3.7
全6話構成の夫婦の会話劇
対話を重ねるにつれ結婚というものが
約5時間の会話を聞いていると流石に本当の夫婦と錯覚してしまう
ブロンソンが乱入して格闘し始めた方が面白くなりそうな場面が30個ぐらいあったな。
木木

木木の感想・評価

4.5
ひたすら夫婦の会話劇、メロドラマ、日本のテレビドラマじゃ味わえない濃密な293分だった。

結婚願望なんて元からなかったけど、こんな物語を観てしまったら、どんなに愛していようが信用できないし、他人と一緒に暮らしていけないなと思った。一時的に満たされて幸せを感じてもすぐ孤独になるし、スウェーデンで放送後、離婚率が急増したのも肯ける。人間は孤独からは逃げられない、一生睦まじく完璧な夫婦なんてそうそういない。

本音で話しすぎるのも夫婦的に良くない、コミュニケーションを取らないってのも勿論ダメ、無関心もダメ、他人に好かれようと振る舞うと自分がなくなって相手に信用されなくなる… 何これどうすれば正解?正解がなさすぎて無理だ。どうしたら真の夫婦になれるんだろう。

劇中で夫婦は一年ごとに更新する方がいいと台詞があったけど、これが意外と丁度いいんじゃないだろか
ペイン

ペインの感想・評価

5.0
人生の5時間を捧げるに値する大傑作。

『ビフォア・ミッドナイト』『ブルーバレンタイン』『マリッジ・ストーリー』『アイズ・ワイド・シャット』…他これら倦怠期夫婦映画の源流にしてキング。

クローズアップと長回しの多用、じっくりねっとり舐め回すようなS・ニクヴィストによる生々しいカメラワーク。本当にそこに実在している夫婦としか思えない主演2人の圧倒的演技力。

本当にこの2人の夫婦の10年ぶんの人生を体験したかのような感覚。観ている最中に何度も“これは映画だ!役者がいて監督がいてカメラマンがいて音声さんがいて…”と自分に言い聞かせながら観ていた。そうでないとあまりの生々しさに身と心が持たなくなってしまうから。

黒澤にしろ、ベルイマンにしろ普遍的な1つのフィクションに過ぎないのに人生の深淵に触れてしまったような感覚にさせられるから本当に凄い。

この内容と5時間という尺でもずっと見ていられるのはまぎれもなく主演二人の魅力に他ならないし、感情を爆発させ、怒号が飛び交ったシーンの後にこの二人がイチャイチャじだす瞬間はたまらなく可愛い。

あと個人的に前半部の二人の寝室のショットがたまらなく好き。本当にさりげない衣装や美術、小道具の使い方に唸る。

頻繁に見返せるような作品ではないが大切な1本になりました。また年老いて観たら違った味わいになるのだろう…
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