楽しみにしていた、「午前10時の映画祭」でのリマスター上映。クリスマスの映画は数多くあれど、この映画が私は大好きだ。映画館に行くと年配の方が結構いた。
ストーリーはまさにタイトルの通りで、一言でいえば「情けは人の為ならず」という話。ジョージの人の良さが、自分の道を狭めていき、やりたいことができなくなり絶望するが、今までの人にしてきた恩が返ってくるというストーリー。このようにあらすじを見てから観ると、ジョージが絶望するまでの話が長いと感じる人もいると思うが、ジョージ・ベイリーという一人の人間の人生を描くことで怒涛の感動のラストにつながってくるのでそれは致し方ないと思う。
自分のいない世界というパラレルワールドの世界観で後の多くの作品に影響を与えた本作。1946年という第二次世界大戦後すぐの映画ということもあって、公開当時は全然ヒットしなかったというのに、じわじわと評価されていって今ではアメリカのクリスマスの定番映画にまでなっている。2級天使でジョージにもとに現れた何とも言えないゆるいおじさんも、愛らしく憎めなくて天使というのもわかる。
ジョージもそうであるように、若ければ大きな夢を抱き、野心を持ってこれから先の人生に希望をもって生きたいと願うことがあるだろう。そんな中で、現実という名の壁にぶち当たり、こんなことは自分のしたかったことじゃない。なんで私はこんなことをしているんだろう。俺がいなくたって世界は回るんだよな。なんて思ったりすることもあるかもしれない。そんなときにこの映画はその悩みの処方箋となるべく助けてくれるだろう。今いる自分は決して無駄なんかじゃない、世界の誰しもが少なからず影響を及ぼしあって生きている。だから人生は素晴らしいんだ。と。
私がこの映画でいいと思ったのは、ジョージという一人の人生を描き、ラストに怒涛の感動をもたらして大団円で終わっているものの、ジョージのこれからの状況に変化が訪れたわけではなく、天使もジョージにヒントを与えただけでこれからの大変さは変わりないこと。それも含めて人生は生きてればいいことあるさって感じられる話になっているので好きだ。人生なんて山あり谷ありで、長い間谷が続くことだってある。それでも歩き続けていれば幸せな瞬間はきっとある。今ある自分の現実に嘆くのではなく、今ある現実と気楽に向き合おうと思えた。これから社会に出ていく人々に見てほしい映画。同時に、人生は甘くない、それでも悪いことばかりじゃない。