このレビューはネタバレを含みます
自分の中にこの映画を評価できるような軸がないので、スコアは単に「死に」ってシャレ。
さて。
昔の映画って、雑味が豊かだなあ。最近の映画は成分表示が書けそうなくらい洗練されている。適切なタイミングで回収される伏線、みんなの解釈がひとつに収束するメタファー。無駄がない。ネットで玄人が綺麗にレビューしてくれて、みんなもリツイートできるような、そういう映画が時代と噛み合うんだろう。自分もそういうエンタメばかり見ているけど。
この映画には、明確な主張もないしわかりやすいシンボルもない。本当に、慌ただしく執り行われるお葬式でしかない。でも象徴って伝える側が用意するものではなく受け手が見出すものだし。押し付けがましくないことで、かえって奥行きが感じられたな。偶然と主観が入り込む余地があるのだ。
いや、中身はバタバタしているし画として強烈なところもあるし、決しておしとやかな映画ではないんだけど。
まあ、お葬式だからこそ無神経と不謹慎が浮き彫りにされて、その無神経や不謹慎も込みで残されたひとは生きていくんだから。その現実がうまく抽出されているんだと思う。そう、現実が表されていればそこにそれぞれに意味を見出せるのだ。あらゆる芸術は単なる伝達じゃなくて、「表現」なんだから。
以下、備忘録というか個人的日記。
祖母の葬儀の時、父がこの映画に触れていた。正座で足が痺れてみんなでもぞもぞ動いていたシーンが、どうしても思い起こされてしまったんだと。
旅行のために数日有休をとり、その予備日というか旅行疲れを抜くために空けておいた日、近所の映画館でやっていたのでふらっと鑑賞。
父の場合は足が象徴だったのかな。立てなくなったらどうしようと思ったのか、笑いながらでも立とうとしたのか。それも解釈しないのが花かね。