このレビューはネタバレを含みます
1973年西ドイツ製作。
監督はヴィム・ヴェンダース。
16mm白黒。
ヴィム・ヴェンダースのロードムービー三部作
『都会のアリス』(73)
『まわり道』(75)
『さすらい』(76)
1本目!!
即興撮影を用いたヌーヴェルヴァーグ風。
随所に監督がファンだと言う小津安二郎へのリスペクトが感じられる。BY WIKI
もう。
好き。
ヴィム・ヴェンダース。
何が好きってそのセンス全て。
結構独特なセンスの持ち主だよね。ヴィム・ヴェンダースさん。
だから結構好き嫌いが分かれる作品だと思う。
「淡々としていてつまらない」
「え?ストーリーは?オチは?」
って思おうと思えば思える。
だけどそんな事全然気にならないほど視界に入る風景や人物が素敵過ぎてもうそれどころじゃない。
この感じのロードムービー、最高だな。
アメリカへの憧れ。
変われない自分達。
現実。
偶然。
ハプニング。
最初の頃のフィリップとラストのフィリップとでは全然違う。
淡々としていて変化もない物語に見えるけど、実はものすごい濃厚でいろんなドラマがそれぞれの登場人物の中で起こっていたよね。
それがおおげさじゃないから余計に良い。
ふわぁっと心に優しくくる感じ。
フィリップが女友達に「どこへ行ったって何を見たってあなたが変わらないと意味がない」的な事言われてたけど、あれは私の心にも突き刺さりました。
すっごいごもっともで...
結局、空虚感満載の人間がどんなに素晴らしいものを見て聞いても、自分がその物事に目を向け耳を傾けないと意味がないのだ。
フィリップは最初はそんな人間だったけど、偶然の成り行きで一緒に旅をすることになるアリスと過ごすことでだんだん空虚感も取っ払えるくらい充実したような日々を過ごせて変わったよね。
フォトブースや体操、泳いだ後の公園のシーンとか。
もうその変化をバシバシ感じることができて、見ているこっちまでニヤニヤしてしまった。
フィリップは変われた。
だからミュンヘンについたら「落書き」はちゃんと書き終えることができたと思う。
そして、アリスは本当にかわいい。
究極のツンデレ。わがまま放題したかと思えば、やきもちもやいて...
あーかわいい。
ちょっとマチルダを思い出した。
なんとなく。
「パリ、テキサス」のハンター君にはかなわないけどアリスもすっごいかわいい。
ヴィム・ヴェンダースさんの映画に出る子役はみーんなかわいい!
あと女の人も。
この映画もろ1970年代が醸し出されててそこも好きだったなー!
服とか。車とか。あと、チャック・ベリーの「メンフィス・テネシー」の演奏ね。
フィリップが途中でアリスに「ロックは好きか?」って聞くとこ好きだな。
所々に散りばめられたロックミュージックも最高。
あ!
開始4分のジュークボックスを流す男として監督が特別出演しているよ。わぉ。
最後のシーンでジョン・フォード追悼し、窓の外に頭を出す2人のシーン。遠くには白い鳩が飛んでた。
いいねぇ。
やっぱどこをどうみてもヴィム・ヴェンダースの世界観がプンプンしてて最高だった。
「アメリカを旅して自分を見失う」「どこへ行っても変わらない」
そう思わない人も世の中にはいると思うけど、私はやっぱこの手のテーマにはひと際考えさせられてしまう節があるからヴィム・ヴェンダースの映画は好きなのかもしれない。
結局自分が周りに意識を向けオープンになってないと、大切なものなんて全く見えない上に見えない理由を周りのせいにしたりしちゃうんだよ。
例え憧れの場所にやっと行けたり、憧れの人にやっと会えたとしても。
結局は自分なんだよ。環境が変わっても変わらなくても。
あー。こういう気持ちせつない。けどすごいよく分かる。
私もよくフィリップ状態になるから変われたフィリップを見てなんか希望が見えた気がしました。
そっと胸にしみる素敵な1本でした。
よし!次は『まわり道』を観ます!