若い頃に何作か観て、苦手意識を持ってしまったヴィム・ヴェンダース。『カモン・カモン』が今作のオマージュということで改めて鑑賞しました。
たまたま出会った男と少女のロードムービー。
移動距離が長い。NYからアムステルダム、そしてドイツへ。孤独な男と9歳の少女が距離を縮めていく。旅の中で2人が成長を遂げる話ですが、この際、ストーリーはどうでもよいです。いい意味で。
ロビー・ミューラーのカメラワークと劇伴がこの作品の哀愁のある雰囲気を決定づけていて、それだけでずっと観ていられる。古さを全く感じさせない。
モノクロと言っても1本調子ではなく、ザラザラの遠景、陽射しの明るさと柔らかさが映える美しいグレートーン、チャック・ベリーの映像は借りものの映像かな、コントラストを効かせギラついた映像がめちゃくちゃカッコいい。
特に好きだったのはカフェでのシーン。窓辺でアイスを食べていて、陽射しが少女の髪に反射する。ジュークボックスの脇にはアイスを食べる少年がいて、キャンド・ヒートの「オン・ザ・ロード・アゲイン」を口ずさむ。子供にこの曲を鼻歌で歌わせるなんぞ、憎すぎる演出✨
あのモノレールを撮りたくてあの街の設定にしたんだろうな〜。
そしてラストシーンの電車の空撮。だんだんザラザラになっていきファーストシーンとつながる感覚。
チャック・ベリー「メンフェス・テネシー」に影響を受けたとのことで、和訳を見るとなるほど。
アリス役のイエラ・ロットレンダーが生意気で可愛い。ポラロイドで男を撮って「自分がどんなか分かるわ」と手渡しながら言い放つ。アリスは空虚な男の心を癒す天使のようでした。