菜南子

さようならCPの菜南子のレビュー・感想・評価

さようならCP(1972年製作の映画)
-
CP“脳性麻痺”に関するドキュメンタリー。
英語字幕が外せず、期せずして麻痺で吃ってわかりづらい日本語を英語を通して解釈するということになってしまった。英語字幕を見て発される言葉の意味は理解しながらも、それに頼らずに彼らの口元を見て言葉を拾うことができたので、このドキュメンタリーの見方としては日本語字幕より良かったのではないかと思っている。

この映画のなかでは、聞き取りづらい言葉もそのままになっていて、脳性麻痺の人達を理解することよりも、意図的にどうなのかという懐疑の目を向けさせようとしているように思える。それは彼らの脳性麻痺をアイコン化してしまい、視聴者との間に距離を作ってしまうため、見ている人は他人事としか思えず、正直痛くも痒くもない。

彼らは募金する人たちに対し、「かわいそうという思いでも募金してくれるならしないよりいい。」と発言している。一見彼ら自身もアイコンとなることを是認しているように思えるが、彼らは葛藤を抱えた上でこういった発言をしており、それをそのまま受け取るのは間違っている。その溜まった鬱憤が歪んだ形で晴らされているからだ。
たとえば、彼らは「膝をついて進むほうが車椅子より早い」と車椅子に乗らない。しかし、後半背中におぶられて電車に乗っている。また、性欲が抑えられないと赤提灯の店に行くだけならいいが、強姦までしてしまう。それは車椅子が嫌いだから、女の人が好きだから。という言葉で収まる話ではない。人と同じように歩きたいが歩けない、普通に恋がしたいが、“普通”の女の人が自分に恋をしてくれるはずがないし、寝るにしても方法がわからない、という劣等感の裏返しだからだ。

周りの人と向き合う努力はしないが、プライドは誇示する人たちという風に見えてしまった。この人達がどういう人生を歩んできたかについては一切触れられていなかったので知り得ないが、とりあえずこのドキュメンタリーにはそういう人物として映されていたように思う。
菜南子

菜南子