MasaichiYaguchi

リリイ・シュシュのすべてのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)
3.7
岩井俊二さんがインターネットで展開した実験的な自らの同名小説を映画化した本作は、いじめや売春、犯罪などをテーマに、14歳という多感な時期にいる子供達の心の闇を鮮烈に描く。
中学2年の雄一は、かつては親友だった星野からのいじめを受け、辛い日々を過ごしていた。
彼は、唯一の救いである歌手、リリイ・シュシュのファンサイトを運営し、そこで仲間を見つけるのだが、終盤で意外な局面を迎える。
原作のインターネット小説は、リリイ・シュシュの熱狂的なファンであるサティという人物が、2000年4月1日にリリイのファン・サイト「Lily holic(リリイホリック)」を開設したと言う設定になっていて、そこに岩井俊二さんは勿論のこと、一般人も書き込みが可能であり、その一般人の書き込みも小説の一部として進行していくという実験的なものだった。
映画は、このインターネット掲示板との過激なまでに融合して展開していく。
リリイについては、シンガー・ソングライターのSalyuが歌唱を、音楽プロデューサーの小林武史が楽曲制作を務めていて、劇中の過酷な現実で生きる子供たちにとっての“支え”、もしくはそれ以上の存在になっている。
劇中には“エーテル”という独特の概念も提示されているが、音楽をはじめとした創作物から“受け取るもの”を意味しているような気がする。