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真夜中のカーボーイのいのネタバレレビュー・内容・結末

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

この映画、すごいな……。
自分の男性的魅力で稼ぐぞ!と意気揚々とテキサスからニューヨークに出てきたジョーは、女性相手に商売をしようとするも上手くいかない。そんな中で出会った、脚の悪い盗癖のある男“リコ”と共に行動していくうちに、二人の間には奇妙な絆が芽生え始める。
様々な商品に溢れる、物質的な消費社会としてのアメリカ。ジョーの田舎での辛い過去のフラッシュバックを掻き消すように、ラジオやテレビ、映画が元気に流れるが、かえって都会の空虚さと彼の孤独を強調するようだ。“カーボーイ”に扮するジョーの虚勢と虚飾、商売相手である女性に主導権を握られ女性に関する性的トラウマもある彼は、かつての幻想のようなアメリカの男性像からはほど遠い。弱者として描かれるリコも同様。なんたる皮肉、容赦ない悲惨な現実。

辛い境遇に置かれた主人公をケアしてくれる都合の良い女性など現れず、都会で男娼をしているジョーと弱者のリコには終始冷たい視線が注がれる。安易な救済に走らない展開は好ましいが、衣食住に事欠く男性同士が何とか支え合っていく様は、観ていてとても辛かった。しかし小便を漏らした体の不自由なリコに服を買って着せるジョーの姿に、人間の美しさが無いなんて言えない。愚かしくても希望を捨てないところも。
1970年代を目前にしたアメリカの一面を描いた名作だと思う。
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