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エースをねらえ! 劇場版のmitakosamaのレビュー・感想・評価

エースをねらえ! 劇場版(1979年製作の映画)
4.7
見たかった奴やっと見れた!ソフトも余り普及されて無いし、配信も無いし、劇場で見る機会も無い。ピアの廉価版dvdブックが発売されて念願の視聴。
一応アニオタを自認してはいるが、今作を見てなかったのは中々の負い目だったよ(笑)

前情報もしっかりあったが、期待に違わぬ面白さだった。というか出崎演出の見応えを十分すぎるほど堪能出来た。

物語は、お蝶夫人に憧れ西高のテニス部に入部した岡ひろみが、新任コーチ宗像仁の目に留まり猛烈な特訓によりテニスプレイヤーとして覚醒していくというもの。
初心者の岡は、最初は分不相応な選抜に抵抗するも、少しづつ自覚を持ちその才能を開花していく。全日本にジュニア強化チームに選ばれるために憧れだったお蝶夫人と試合をし勝利。海外遠征の飛行機で旅立つ岡に期待を込める宗像コーチの死までが描かれる。

先ず凄いのが、かなり駆け足な内容なのにダイジェスト感が無い。これが演出の妙ですよ。
出崎といえば透過光・ハーモニー処理・スローモーション・分割画面など様々な手法が有名だが、今作ではどのシーンも演出的な印象が強いために、一つひとつのエピソードの時間的な短さが気にならない。試合のシーンとかも尺としては短いんだけど一切物足りなさを感じないもんな。

それに、動かす所はちゃんと動かしてるんだよね。ちゃんと緩急がある。今作はその発見が嬉しかったわ。

押井守が言っていたが「主観的な時間の演出が凄い」というのも良くわかった。試合中にヘリコプターが飛んでいるシーンで、キャラクターを動かさずに空のヘリコプターだけを動かす。これによる“時間の演出”が成されるとのこと。なるほどなー。

また各キャラが各々際立っていて良い。ひろみとマキは70年代特有の普段はエキセントリックな会話を楽しむ仲良しで、ワチャワチャしていて微笑ましい。何があってもひろみの味方であるマキが愛おしい。
自分にも他人にも厳しいお蝶夫人が、ひろみを認めるまでになるまでのドラマも良いし、宗像の義兄妹で弾丸サーブの蘭子も良いキャラだ。
尺が無い故に、ひろみの選抜に納得がいかないテニス部員の陰湿な苛めシーンが無くなったのも良かったと思う。

旧テレビシリーズから6年、新テレビシリーズから直後であり、同じ話を3度に渡り映像化していることもあって、熟れているのもあるだろう。杉野昭夫のキャラデザや作画・小林七郎の美術も作品ごとに精度が増している。1枚ずつの絵は凄い変なんだけど、映像になるとダイナミズムと外連味に溢れているから不思議だ。

アニメ映画における“演出”という概念をを確立した記念すべき作品。
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