湯っ子

クラムの湯っ子のレビュー・感想・評価

クラム(1994年製作の映画)
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漫画家を志す少年のお話「ファニーページ」の「似ている作品」から。ロバート・クラムという名前は知らなかったけど、彼の描くキャラクターにはうっすらと見覚えがあった。
「ゴーストワールド」の監督が撮ったドキュメンタリー。そして、「ゴーストワールド」でブシェミが演じた役のモデルとなったのが、このクラムなんだって!なんかいろいろつながってたのがわかって嬉しい。
ドキュメンタリーというのは、ある一面からの真実であってすべてではない。この作品を見る限り、クラムという人はちょっと偏屈な変人だけど、才能があり嘘がなくフレンドリーな人に見える。だから、私は作品が始まってすぐに彼のことが好きになり、彼の過激すぎる漫画が登場しても笑って許せてしまう。
「頭に浮かんだことを書いてるだけなんだ」。それは本当なんだろう。ヘイトを主張してるようには感じられない。でも、別の状況でくだんの作品を目にしたら、私も人種差別!女性蔑視!って目をひん剥いていたかもしれない。でも、このドキュメンタリーの中で「政治的に正しい」主張をする女性が大真面目にクラムを糾弾する姿は、ただの石頭みたいに見えてしまうから不思議だ。
クラムには兄と弟がいる。そもそも漫画に夢中になったのは兄で、幼い頃に兄がクラムと弟に及ぼした影響はとても大きかったようだ。
でも、撮影当時の兄と弟は明らかに病んでいて、一緒にいるクラムがまともに見える。クラムと語らう彼らには、兄弟ならではのくつろぎがある。ギョッとするような話も出てくるのは、クラムが彼らを批判しないことを知っているからだろう。だけど、彼らが病んでしまったのは、クラムが社会的に成功したからというのも一因かもしれない、と考えると切ない。
また、クラムには姉と妹もいるが、そのふたりは撮影を拒否した。ここにもまた別の真実があるのだろうと思う。
湯っ子

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