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アラビアのロレンスの盆栽のレビュー・感想・評価

アラビアのロレンス(1962年製作の映画)
4.0
砂と情熱


壮大なスケールの骨太な叙事詩。T・E・ロレンスの波瀾万丈な生涯を描く言わずもがなの名作。鮮やかでまるで絵画のような映像美と複雑なキャラクター描写が織り成す魅惑的な207分。VFX無しの映画なので全てがリアルで、家で鑑賞しても鳥肌立つほどの迫力。映画館で観たらどうなってしまうんだ。

約4分の序曲から始まり、衝撃的な展開から幕を開けます。本作は壮大な砂漠の映像のみならず、ビターで中身の濃いストーリー構成や緻密なキャラクターの心理描写によって名作映画としての地位を確立したのだと思います。

植民地主義の愚かさと混迷した戦争描写が強調されており、勝利を手にした時に舞い降りるのは名声だけではないことを繊細に描く。欲望が支配を生み、ロレンスの栄光が尊大さに変わる瞬間は恐怖心が芽生えてしまいます。砂漠の民の信頼を我が物にし、彼らを率いて戦場へと向かう。どこか遠い宇宙の砂の惑星でも同じようなことが起きた気が。
この砂漠を制する者は、全てを制し、何かを失う。

映画の視覚的な贅沢さと物語性は、映画芸術の頂点を極めたものと評価でき、その驚異的な演出と優れた脚本は、何度観ても新たな発見がある不朽の名作と言えます。叙事詩は本編が長ければ長いほど見応えがあるので自然と高評価してしまいます。

英雄でさえ死ぬ時はあっけない。
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