【人間と業】
※Bunkamuraル・シネマ ワーナー・ブラザース創立100周年記念上映 35ミリで蘇るワーナー・フィルムコレクション
今週はトム・クルーズ・ウィークっぽい。
配役が決まっていたリバー・フェニックスが亡くなってしまって、クリスチャン・スレーターが代わりに演じることにかったと報じられたことを思い出す。実際、エンド・クレジットではリバー・フェニックスについて触れられるし、クリスチャン・スレーターは、彼ゆかりの慈善団体に出演料を全額寄付したと伝わっている。
ただ、そんなサイド・ストーリーとは別に、この「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」は、非常にクオリティの高い作品だと思う。
原作もそもそも高い評価だし、原作者が脚本を書いたこともよく知られている。
途中あれやこれやがあって、それも余計な話題になったが、作品として大きな賞に恵まれていないことが全くもって不思議なほど、示唆にとんだ映画だ。
基本的にブラピ演じるルイの、1791年から現代まで続く物語になっているが、トム・クルーズ演じるレスタトはもっともっと前から生きている。アントニオ・バンデラス演じるアーマンドも同様だ。
こうした長い時を経る中で、世の中自体も大きく変化する。
この作品は、その大きく変化する社会と、変われないヴァンパイアの対比でもあるのだ。
だからこそと言ってはなんだが、作品の展開力は目を見張る。
目立った音楽がその都度あるわけではないが、オペラを観ているようだ。
エンディング、ガンズの「悪魔を憐れむ歌」を聴くと、ロック・オペラだったかなんて思わされる。
(以下ネタバレ)
独立戦争後間もないルイジアナ・ニューオリンズ。
黒人のムーヴメントらしき喧騒を見て、レスタトは侮蔑するような言葉を発する。
当時の白人上流階級には女性蔑視や人種差別的感情が普通だったのだ。
そして、嗜みのような同性愛と小児性愛。
ルイとクローディアをヴァンパイアにするのは同性愛や小児性愛のメタファーだ。
タブーだろうが、やりたければやるのだ。
いつまでも美しくありたいと願うエゴ。
アーマンドがルイに皮肉混じりに、フランス革命やナポレオン支配などの大きな混乱を経て、それでも民主化に向かう1800年代フランス社会と、ルイが人間としての後悔の念をなかなか捨てられないことを堕落していると表現する。
これはヴァンパイアに姿を借りた人間の物語なのだ。
人間の業の物語なのだ。
この作品が今作られていたら、大きな賞を取るような気がする。