Foufou

宇宙戦争のFoufouのレビュー・感想・評価

宇宙戦争(2005年製作の映画)
3.8
公開時に映画館で観て、スピルバーグがまだまだ健在であることを確認した作品。トム・クルーズにハマる時期が来て、2回目の鑑賞。ちなみに最良のトムが拝めるのは『マグノリア』だと思っております。彼にとっては黒歴史のようですが。

で、そろそろマーベル映画以外のものも子どもたちに観せたくて、サブスクサーフ。わたしの幼少時は、夜はテレビで映画というのが定番で、金曜ロードショーや日曜洋画劇場のオープニングテーマが、いわば大人の世界の象徴としてありました。特に金曜のOPと日曜のEDは、大人になるとは大きな責任と悲哀を託されることだと暗に諭されるようで、ちょっと不安でした。一人で寝なければいけない心細さとも結びついていたのかな。で、なんといってもスピルバーグがかかるのが楽しみでした。『デュエル』とか『ジョーズ』とか、何度観たか知れません。で、『ジョーズ』なんか、後付けで映画技法なんかもちょいちょい知るようになって、あんなところにヒッチコックの『めまい』のカメラワークが使われているのか……と驚いてみたり。子どもたちに、パパが幼少時に感じていた「世界に対峙することの不安」を映画を通して感じてもらいたくて、『ジョーズ』や『激突』なんかを検索するんですが、吹替版がことごとく、ない、という。『スーパーマン』の吹替版すらないですからね。。声優の権利問題とか、大人の事情があるのでしょうか。

『宇宙戦争』は幸い吹替版がございまして、それでこの度三度目の鑑賞と相成りました。

トライポッド出現のシーンは、今観てもまったく色褪せていない。あのシークエンスは、映画の教科書に是非とも載せるべきでしょうね。見事な恐怖の演出です。そして、異形のものがここにこういうふうに立ったらどう映えるだろうという構図問題ですね。これはもう、他の追随を許さないでしょう。触手に絡め取られて人間がヒューッと釣り上げられるなんかも、いいですね。ちびっ子も息を潜めて観てました。時々うわーっとか言いながら。


※以下はネタバレ含む。

いっぽうで、軍の描写が鈍なんですよね。これはどうしても軍を格好良くは描きたくないというスピルバーグの意識の反映のようにも思えますが、実際のところはどうなんでしょう。地下室のティム・ロビンスには相変わらず失笑させられます。わたしにとっては『ショーシャンク』の人ではなく、『ミスティック・リバー』の人。どうにも小児性愛のイメージがつきまとう。そんな不安はここではいらんなぁ……とは思いつつ、レトロチックな目玉サーチャーの追撃シーンなど、ジェームズ・キャメロンの『アビス』を思い出します。鏡の後ろに隠れたのは映画的にありなんですけど、誰かがヘマして足をパッと出してしまって図らずも目玉サーチャーの気を引いてしまう場面で、ちびっ子は吹き出してましたね。さもありなんです。トムの父親としての造形は……三度目に観て、なんかようやくスピルバーグの手つきが見えるような。短気は損気で、それで奥さん、トムに引導を渡したんだろうな、と。時間にもルーズだし、独善的だし、オツムも悪い。そんな港湾労働者をトムは演じているわけです。奥さんの再婚相手は高級SUVに乗る金持ちエリートといった感じ。ここでちょっと思うわけですね、在りし日に、トムに惹かれた奥さんの心情を。欠点だらけかもしれないが、なにかいいところがあった。それで駆け落ち同然で一緒になったんだろうな。でも、耐えられない何かがあったんだろうな。だから、トムの、父親たる自分の再発見の過程としての映画でもある。そこの評価は、やっぱり分かれるんでしょうね。

新型コロナ禍のフィルターを通して観ると、じつに感慨深いものがあります。原作はH・G・ウェルズ。こちらは未読のまま最初に鑑賞して、ちょっと拍子抜けしたのを覚えています。が、今観ると、新型コロナでもなんでも、駆除よりは共生だよな、と。人類が撲滅できたウイルスなんて、天然痘しかございませんからね。ペスト(こちらは細菌ですが)だって、人類は克服したわけではありません。

ウイルスの環境適応は脅威的で、火星なんかにはおそらくウイルスならいるんではないかと言われている。で、火星への有人探査がやがて実現するとして、やはり心配なのは火星ウイルスの、地球への持ち込みかな……と。もしかすると、ウイルス禍のせいで火星から地球に移住したヒト型生物が太古に存在したのかも……とか。

妄想が止まりません。
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