このレビューはネタバレを含みます
売れない作家ドン・バーナムは重度のアルコール依存症。
兄や恋人の懸命な努力も効を奏せず、目を離した隙に一杯あおる始末だった。
馴染みの酒場でも彼の病気は知られていたが、いよいよ酒代がなくなったドンは、フラフラと街をさまようのだが……。
ひとりのアル中の苦悩を真っ向から描き、アカデミー作品・脚本・主演男優賞に輝いた力作。
以前勤めていた病院で、アルコール依存症患者を何人か看ました。
禁断症状の恐ろしさと言ったら、薬物依存のそれとほぼ変わらない。
いや、薬物依存よりも凄まじいかも。
幻覚、幻聴は当たり前。病院を抜け出さないようベッドに縛り付けても、自らの手足の骨を折ってでもどうにかして脱出するんです。病院の外に、酒を求めて。
一般的に「依存症」といわれている類のものは、一種の「病気」であります。
本人の意志の弱さを指摘する人がいますが、そうではない。
ここを理解してあげないと、依存症の治療は難しいのです。
そして、もちろん治療には本人の「絶対に克服する」という強い気持ちが一番大事ですが、同じくらい大切なのは周囲のサポート。
協力し、支えてくれる人無しには完治はありえません。
本作は、アルコール依存症に蝕まれていく人間の姿そのものを描いています。
金も無いのに酒ばかり飲み、金が底をついたら知人に金の無心をし、それも使い果たしたら今度はスリをして酒代を工面しようとする。
観ていて情けなくなるくらいのどうしようもない有様です。
けれど、これが現実。典型的なアルコール依存症患者でした。
主人公ドンは、自らアルコールを断つ決意をしましたが、果たしてどうなるか…。
友人もおらず、唯一の家族である兄からも見放されたドン。
こんな自分をたった一人、心の底から心配してくれて、支えてくれる素敵な彼女がいるのですから、彼女からも見放されないようリハビリを頑張って欲しいです。
やり直すなら、今しかない!