蛸

失われた週末の蛸のレビュー・感想・評価

失われた週末(1945年製作の映画)
4.0
アルコール依存症で売れない作家の男がどんどん身を持ち崩していく話、と言うとなんだか一本調子のような気がしますが最後まで退屈しませんでした。ワイルダーは上手いですね。
アメリカの作家にはアル中が多いという話を聞いたことがあります。「良い作家とは酒を飲む作家のことだ」という格言がありましたね。
もはや酒のことしか考えられなくなっている主人公。全編を通して変奏される不穏な劇伴がすごくよくマッチしています。
絶望感が強いお話なのでノワール的な画作りで、影に気を配った演出が多用されています。シラフの主人公に対するアル中の主人公が暗い影によって表現されているようにも思えました。
主人公は売れない作家で働いてもいなくてアル中、というどうしようもない男なのですがなぜか女にモテます。羨ましい限りですね。
全編を通して、割とレイ・ミランドの一人芝居的な要素が大きいです。登場人物も少なくコンパクトな小品です。
冒頭とラストの対応も上手いです。依存症は意志の力で克服できるものではないので、その観点から見るとあのラストには疑問が湧きましたが。
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