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雪の断章 情熱のTaiRaのレビュー・感想・評価

雪の断章 情熱(1985年製作の映画)
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斉藤由貴の映画キャリア、一歩目から狂ってて凄いな。相米慎二が最高にどうかしてる時代。

まぁ、オープニングの狂気的な長回しだよね。約14分のワンカット。厳密にはタイトル出る前に一箇所繋いでるから擬似だけど、それでも2カット。セットの中で時間と場所がどんどん移り変わる。『ワン・フロム・ザ・ハート』もセットどんどん動いて場所と時間がワンカット内で変化してたな。それを『黒い罠』みたいに撮る。クレーンの動き方とか照明の演出とか凄い。その上で子役の芝居は凄い下手っていう。長回し終わって10年後に場面が飛ぶとバイクの後ろで松田聖子歌いながら仰け反ってる(危ない)斉藤由貴登場!ってもう全てが過剰で楽し過ぎ。意地悪な金持ち一家に養女として引き取られ、苦労してた孤児を半ば誘拐みたいにして連れ帰る男って…。この斉藤由貴と榎木孝明の関係もヤバい。『源氏物語』の「若紫」みたいなもん。それを自覚した斉藤由貴が風呂上がりに「女」として鏡を見つめるとこ、デビューしたてのアイドルとは思えん芝居。電話をかけて一言、「……偽善者」ってのも良い。あの場面、遠方で電話受ける榎木孝明と電話掛けてる斉藤由貴が同じ空間にいるんだが、あれ『ツィゴイネルワイゼン』でも観たな。榎木孝明の親友として世良公則が出て来て少女と大人の男二人で三角関係みたいになるのもヤバい。しかもこれ殺人事件めぐるミステリーだからな。何観てるのか分からなくなって来る。刑事役のレオナルド熊がまた良い。初登場で何故かフェンスの上に座ってたり。榎木孝明の婚約者が訪ねて来た後、斉藤由貴が部屋で一人、バービーボーイズの「負けるもんか」爆音で流しながら爆踊りするとこ最高。選曲がいろいろヤバい。事件の真相に気付く&少女から女へ変容して行く自分に葛藤する場面はシュール。これアイドル映画なんだけどね。中原中也の『サーカス』暗唱しながら花屋でくるくる滑ってる部分も凄い謎だし。幼い自分をピエロが川に投げ捨てたら、川を泳いで鳩を助ける。『買物ブギー』にのせて。冬の海で波をかぶり続ける世良公則とか夜の公園で桜の花びらが舞い散りまくる場面とか、後半は異様な場面の連続。終わり方も難解というか不思議なラストで謎の余韻ある。川で溺れ死んだ子供の見た夢なん?って気もして来る。
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