さすらいのエマノン

007 スカイフォールのさすらいのエマノンのレビュー・感想・評価

007 スカイフォール(2012年製作の映画)
5.0
007シリーズの中では『ゴールドフィンガー』の次に来るのが本作だと自分は思っています。

まずはアバンタイトルが凄まじい。NATOに送り込まれた工作員の情報が入ったHDを賊に奪われ、追跡するクレイグボンド。必死のパッチで敵が乗り込んだ列車に飛び乗り、屋根から飛び降りて客室車両に着地。そして、さり気なくシャツのカフスの乱れを直す! あの無骨な無表情で! エレガント! もう、かっこよすぎてチビりましたわ! 

そして、Mの指示により、マニーペニーに誤射され、深い渓谷へと落下(フォール)していく。此処でオープニングタイトルがインサート! アデルの歌う『スカイフォール』と共に! この映像が洗練されていてかっこ良い。此れも歴代オープニングタイトルの中でも『ゴールドフィンガー』を凌駕する仕上がりとなっている。

何度も『ゴールドフィンガー』が出てくるが、007シリーズは此の作品の呪縛に永年、苦しめられて来たといっても過言では無い。

先代のピアースボンドの初主演作の名が『ゴールデンアイ』。『ワールド・イズ・ノット・イナフ』では、シャーリー・バッシーのボーカルを彷彿とさせる様な主題歌を起用したり。

だが、その試みは何れも不発に終わってきた。現在の007シリーズの雛形となった『ゴールドフィンガー』には太刀打ち出来なかったのだ。

が然し、本作は、ようやく、其の“呪い”を解くことが出来たと感じた。
重厚で在りながらシンプルなストーリーを紡ぎ出す、アカデミー受賞監督のサム・メンデスの手腕だ。

ヴィランを演じるのが、コーエン兄弟の傑作『ノーカントリー』で不思議なヘアスタイルの不気味なコロし屋を演じたハビエル・バルデム! 素晴らしくキャラが立っている。ヴィランが際がってこそ、はじめて、アクション映画は成立するのだ。凄腕のハッカーで在りながらも、かつて所属していたMI6のボスであるMにマザコンに近い歪な感情を抱いている。素敵やん! 人間味に溢れていて。本作まで“M”役を演じていた女性、ジュディ・リンチがシリーズ最高齢であるボンドガールになるという趣向。シルヴァにとってもクレイグボンドにとってもMは“Mother”の“M”でも有るのだ。

つらつらと書き連ねて来たが、本作が数多くある007シリーズの中でも出色の出来であることに異論を挟む者は少ないであろう。未見の方は、まず『ゴールドフィンガー』から観て、本作を鑑賞することを推奨します。

傑作!