囚人13号

フェイシズの囚人13号のレビュー・感想・評価

フェイシズ(1968年製作の映画)
3.5
どうでもいいが終盤の蘇生シーン、何故か俺の頭の中ではブラック・ジャック「記憶の君へ」が流れていた。良い曲だ。

問題は一つ、これに129分費やす意味があったのか。情緒不安定な人たちが感情を炸裂させつつ三角関係が密室で処理される、タイトル通りフェイスの三人称単数"フェイシズ"の応酬が繰り広げられ、主観に徹しないカメラが人間の顔という経済的な被写体を捉え続ける。
これを基軸にゴダールみたく全編男と女とサウンドで紡がれていくのだが、暴力的なモンタージュや理性と乖離した台詞は全くもって見出せず、つまり決定的な精彩を欠きつつも上々の完成度で120分続いていく感じか。

とはいえその顔たちも中々アイロニーな奴らが多い。クソジョークや卑猥な話に大袈裟笑いする彼/彼女らの顔、引き攣ったような表情の中でも眼は全く笑っていないし、その瞳の中には紛れもなく"老い"への恐怖が(本作におけるそれは専ら性的不能者となることらしいが)投影されている。
後年はジーナ・ローランズ一人が背負うことになる不可避的な主題だが、ここでの彼女はまだ若さの象徴側であった事は感慨深い。
囚人13号

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