ムテモン

フェイシズのムテモンのレビュー・感想・評価

フェイシズ(1968年製作の映画)
4.3
中年夫婦の危機に関する映画、あるいはとっくに青春が終わった人々の悲哀に関する映画ではあるのだが、あくまでその方向性を決定づけるのはラストシーンの階段であって、劇中で長い時間を割いて描かれていたのは複数男女間の空気感であるように思えた。しょうもない喧嘩を始めたあとすぐ怪我して息切れしてお互いの社会的立ち位置を確かめた後に「お前やるやんけー」みたいなおっさんうんこミュニケーションも好きなんだけど、今作で目についたのは惹かれ合う男女2人がいて、どうにか他のゲストを帰らせようとするあの空気だった。一刻も早くふたりきりになりたい。でも物語上はお邪魔虫のゲストにだってそれぞれ血を通わせたいというのがカサヴェテスのエゴで、それゆえに各シーンが冗長になり、同時に豊かになっている。ラストと同じくらい印象に残ったのが、パリピ青年にゾッコンだった酔っ払い芋ババアの独白だったことは、それを示唆していると思う。
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