ムテモン

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版のムテモンのレビュー・感想・評価

4.6
90年代の台北で、富裕層の若者たちがそれぞれのパートナーシップを持て余していく。
序盤、ある人物が「ビジネスにおける成功の秘訣は中国人が好む"情"に訴えることだ」と口にするが、陰口を叩いて立ち回りばかりを気にする彼らの関係において"情"と"芝居"の境界線は曖昧になり、対話すればするほど各々の孤立を深めているように見える。
この映画を群像劇と捉えて彼らの人物相関などを把握しようとする必要は恐らくなくて、明確にこの時代/社会/関係形成に適応できていない人物を中心に据えていると考えて問題ないと思う。
あるいはそれだけ、琪琪(チチ)とMolly(モーリー)が真夜中の庭で煙草をふかす場面は、あっけらかんとした前半部分の中では明らかに異質かつ密接であると言い換えてもいい。この場面だけが後半以降に散見される重みを帯びている。

コメディという観点では、笑ったシーンがあったか思い出せない。正直、エドワード・ヤンの映画自体が姿勢を正して観ないといけないような強制力があって、いろんな人が言ってるようにコメディとの相性は悪い気がする。
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