Itsu

ニュー・シネマ・パラダイスのItsuのレビュー・感想・評価

5.0

自分史上、暫定1位の映画。

サルヴァトーレが夜更けに家に帰ると、母から電話があったと聞いた。アルフレードが死んだ。故郷を発ち、30年が過ぎた。家族も捨てた。友も捨てた。懐かしい名前だった。
「ローマへ行け。故郷を離れろ。すぐには帰ってくるな。それが懐かしく、ノスタルジーを感じようとも。人生は困難だ。お前の愛する映画とは違う。外へ出て立派になれ。」
そう告げられたサルヴァトーレは、30年が過ぎた今もこうしてローマにいる。ベッドに身体を投げ出し、かつて自分の全てだったかの故郷を想った。

映画を愛し、あの映写室でアルフレードとの絆を育んだサルヴァトーレ、通称トトの回想を辿る物語。
あの小さな街の映写室でトトは歳の離れた永遠の友であるアルフレードと出会う。そこに訪れる街の人々は、小さな映画館で笑い、泣き、驚き、ときめいた。彼らはそこで夢を見て、映画と共に人生を送っていた。まさに〝映画の楽園〟だった。

最高です。歳の離れた2人の絆。戦争や別れがあろうとも、切れることのない友情。映画で繋がり、全てを与えたアルフレードは、トトの成長を願い心を傷ませながらも別れを選ぶ。それが切なくて儚くて。トトをそばでずっと見てきたからこそ、愛しているからこそ、行って欲しかった。帰ってきてほしくなかった。その愛に誰も涙を堪えることなんてできないでしょう。カフェにいたから堪えたけど。映画が人の心を満たすその演出もまた良かった。時代の波には逆らいないものの、ひとときの楽園であったあの映画館がいかに特別なものなのかが痛いほど伝わった。

哀愁漂うメロディと共に、暖かく儚い友情に触れる映画。映画への愛を感じながら、この名作を心に刻んで欲しい。
Itsu

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