バナンザ

ニュー・シネマ・パラダイスのバナンザのネタバレレビュー・内容・結末

2.9

このレビューはネタバレを含みます

30年間家に帰らないトトが、仲良しのアルフレッドの死の知らせを受け、若き日にアルフレッドと過ごしたシチリアでの思い出を振り返る。映画好きのトトと映写技師のアルフレッドとの友情や若き日の恋心・トトの日常が映画館を中心に描かれている。

まずこの映画で魅力的な部分は、映画を通じてフィルム映画の発展を追えることである。アルフレッドが自らの経験を話すシーンからトトの成長とともに映画でもカラー映画が登場してくるまで、フィルム映画がどういうもので、投影に携わる人々がどのような苦労をしてきたのかが描かれている。個人的に、初めは教会で映画が上映されていたことが衝撃的であった。アルフレッドが10歳から映像技師として働き、無声音映画を上映していたとき、手動で映像を動かしていたため、疲れるとスピードが落ちてしまったと言う。しかし、自動で映像を流せるようになるとそのような苦労は感じられなくなる。フィルム映画は回し続けることでピントがぼけてくるし、一度上映したら、次の再生のためにフィルムを巻きなおさなければならない。トトが青年期になるとフィルムは不可燃性になった。一部と二部に分かれていた映画は、一部の上映が終了したら二部を映写機に入れ替えなければならない。しかし、フィルムは複製に費用がかかるので、他の劇場と共有している場合、他の劇場で二部の放送が終わるのを待ち、回収し協会に持ってこなければならない。一部を見終えた観客は二部を早く見せろと怒鳴りあがる。現在では、考えることのできない手間暇が映画の中では当たり前のように表現されていた。10年フィルムの改良が早く行われていれば、アルフレッドは失明することはなかっただろう。

2つ目はアルフレッドがトトを喜ばせるために話したおとぎ話について。王女に恋をした兵士が100日間昼夜を問わず、バルコニーの下で王女を待つことが出来たら、共になることを約束されるが、99日目の夜に兵士は王女を待つことをやめてしまった。アルフレッドは兵士が去った理由をトトに見つけ教えてほしいと言っている。この答えは映画の中で主張されてはいないものの、人物の関係やセリフを通じて間接的に表現されていると思う。端的に個人的結論を述べると、兵士が去った理由は社会的地位の相違にあると考えている。兵士は90日目以降愛という感情を抜きにして王女との関係を心に浮かべたとき、生活の違いや社会的・政治的背景の違いが、共にいることに悪影響を及ぼすことを悟り、99日目に王女をあきらめたのではないかと思う。そして映画の中で王女を待ち続けたバルコニーの下をシチリアでの生活と重ねている。そして王女をエレナに例えて、兵士をトトに例えている。現に、映画の中では銀行の重役をするエレナの父が原因でトトはエレナにあることができなくなったと想像することが出来る。学識がないアルフレッドが利口であったトトが映像技師になることを反対していた。アルフレッドは«人にはそれぞれ従うべき星がある»だからトトに村を出ろと促したのではないか。村を出ることは兵士がバルコニーの下を離れることと重ねることが出来る。バルコニーの下でエレナを待ち続けるのではなく、利口なトトには社会的によりふさわしい地位にいてほしかったのではないか。(現に経済的に成功しているトトがエレナではなく数々の女性と関係を持っていることが違和感に思うが…。)ローマに出たトトは社会の中でシチリアの社会をより客観的に認識することが出来たのではないだろうか。

3つ目は描かれていないトトの社会的な地位について。30年家に帰っていないトトは豪華な内装の部屋で女性と同じベッドで寝ていた。これが経済的な成功者を一番端的に表していると言える。葬式でトトの旧友がトトに敬語を使っているとことからもトトが経済的に成功したと言うことが出来る。また、トトにシチリアに換えるときに飛行機を利用している。アルフレッドの葬式は1954年に行われ、商用ジェット旅客機がイギリスで登場したのが1952年なので週式飛行機であったとしても高額の搭乗費用だったと推測することが出来る。ちなみに、映画ではフライト時間が1時間だったと述べられ、現在でのローマからシチリアのパレルモまでの飛行時間は約1時間5分なので、ジェット飛行機であったと思われる。トトは億万長者だろう。

最後の4つ目は、アルフレッドの友情について。トトの幼少時代に捨ててあるフィルムのメガはトトのものでアルフレッドが預かると言っている。アルフレッドの死後、そのメガを編集しトトのプレゼントしていることからアルフレッドは幼少期のトトとの約束を果たしている。また、アルフレッドは教会での火災で失明していることを考えると失明前にすでにフィルムを編集していたと推測できる。アルフレッドの堅実さが感じられる。

«人生はお前が見た映画とは違う もっと困難なものだ»
«自分のすることを愛せ»

映画の中で一番美しいキスシーンだった。
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