しん

ビフォア・サンセットのしんのレビュー・感想・評価

ビフォア・サンセット(2004年製作の映画)
4.4
鑑賞後のなんとも言えない多幸感。
感情が迷子だけれど脱力感に近い。

話の内容は至ってシンプルで、奇跡的に再開した男女二人がパリの街をただ歩きながら話し続ける、というものだが、なんたって会話の密度が凄まじい。

彼らの関係性が最低限理解できるような回想シーンはそこそこに、濃度の高すぎる再会後の会話劇が怒涛に続くのでしっかり追体験できるし、そのおかげで体力も消耗します。

主演二人の長回しのセリフがとにかくすごい。
カットが全然途切れず、ナチュラルな二人のシーンがただ流れ続けるのでのぞき見しているようだった。

思い出を元に、ジェシーは本を、セリーヌはワルツをそれぞれ作ったけれど、同じ創作物だとしても前者は美化して後者は感じたものそのままを歌っていたような気がしたのでなんだか胸がギュッとなった。

とにかく別れが惜しくて最初はそれなりの理由をつけるけど、後半はもう破綻していて可愛かったね。一緒にいれるなら理由は何だっていいんだけれど、理由をつけないと一緒にいられないのが切ない。

発つ前にセリーヌの部屋で過ごした一部始終をジェシーは生涯忘れないんだろうな。

最高に好みの映画でした。
同じ星の人間と話すのが絶対に楽しい映画。

自分を自分たらしめている人間とふと街で再会した時、きっと人はジェシーとセリーヌのようなやりとりを延々と繰り返すんだろうなと思います。僕もその一人です。
しん

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