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去年マリエンバートでのchilmのネタバレレビュー・内容・結末

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

迷路のようなホテルで、古風なバロック装飾だけが全ての秘密を知っている。

静止する人々。誰が眠っていて、誰が目覚めているのか、嘘をついているのか。

自分の内面をえぐるように、問いが続く。同じ言葉で、繰り返し、繰り返し。あなたのことを知っていると男は言う。問われるうちに自分自身の輪郭がぼやけていくような気持ちになる。しかし見渡せど周囲には、永遠に続く、長い廊下と扉、大きな鏡、左右対称に整頓された庭ばかり。エッシャーのだまし絵のような館は美しいが退屈なブルジョワジーの日々を象徴しているかのようだ。

「フランス式の美しい庭に生きた草花は何一つなく、永遠を閉じ込めた石が並んでいるだけ」という最後のセリフを聞き、男は死んでいたのかも。と思った。
おそらく、去年マリエンバートで。

鑑賞しながら、小さい頃に持っていた豪華な装飾付きのボックス型オルゴールのことを、なぜか思い出した。それにはいくつかの人形が付いていて、開けるとくるくると回った。箱が閉まっている時、箱の中の人形たちがどうしているのか 気になってたまらなかった。 この映画の沈黙と静止は、そのオルゴールの中身を思い出させるような奇妙な美しさがあった。
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