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去年マリエンバートでのpiyokoのレビュー・感想・評価

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)
4.3
男は一年間女を待っていた。
しかし女は男との一年前を覚えていないという。
優柔不断な女とその女を愛す男。
男女の絡みが幻想的に描かれる。

アラン・レネ監督作品。
時間と記憶の曖昧性を
独創的な視点で捉えている。

冒頭に反復される抒情的なセリフに誘引され
早くもこの世界観に没頭する。
現実的であり現実的でない世界観により
潜在意識を刺激させられる。

この芸術性の高い作品は
もはや映画というよりは
前衛美術を目にしているかのようでもある。

脚本はアラン・ロブ=グリエ。
のちの彼の初監督作品となる
「不滅の女」を連想させる。
彼の特徴が本作でも際立って見える。

時間の経過を意識した流れるようなカメラワークや
シュルレアリスム絵画にみられるような人物描写は
とても美しく、特に幾何学式庭園に人が散りばめ
られた演出には感銘を受けた。

また、あえて登場人物に名前を付けていないことから
キャラクターをオブジェ化しているような印象も受けた。
それによりさらにシュルレアリスムに融合させた
人物像に仕上がっているように感じた。

それにしてもわけがわからないのが楽しい。
とはいえ終始思考をフル回転させなくてはならず…
それが醍醐味といえばそうなのだが結構ハード。
観賞後はどっと疲れた。

主演のデルフィーヌ・セイリグは、
「ブリュッセル1080、〜」の
ジャンヌ・ディエルマン役でも有名。
ココ・シャネルを纏った彼女の美しい佇まいが印象的だった。
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