みおこし

ディス・イズ・イングランドのみおこしのレビュー・感想・評価

4.0
舞台は1983年のイギリス。10歳のの少年ショーンは、フォークランド紛争で戦死した父親が遺したベルボトムを履いて登校したことから学校でいじめられるが、その帰り道にスキンヘッドのグループと仲良くなり仲間に入れてもらう。ある日、服役中だった元リーダーのコンボが戻り、チーム内に不穏な空気が流れ始め...。

シェーン・メドウス監督による名作イギリス映画。純朴な少年がイギリス国民戦線の活動に傾倒し、"誤った"ナショナリズムを植え付けられていく中で見つけた答えとは...。当時のイギリスの世相が分かるフッテージをまとめたオープニング映像に始まり、ピュアな少年が下校する場面から始まる流れは『ジョジョ・ラビット』を彷彿とさせますが、よりこちらの方が全体を通してシビアな演出。
自分の父親を英雄と慕っている彼にとって、彼の形見であるベルボトムは誇り。父親のことを少しでもバカにされようものなら、年齢関係なく立ち向かっていける勇気もあるショーンですが、その物怖じしない態度に目をつけたコンボがだんだんイギリスの貧困・衰退の原因は移民にあると教唆。どちらかというといじめられっ子で、素直なわんぱく少年だったショーンに、こうして移民やマイノリティを傷つける攻撃的な精神が植え付けられていく様子は切ないけど、ものすごくリアル...。こうやって知らず知らずのうちに、子供たちの中に悲しい知識や偏見が教えられてしまうのかなと。でも、本作におけるコンボもある種の被害者であって、イギリスの明るい未来を望んでいく過程で、ヘイトの精神も身についてしまったわけで。こうやって暴力や差別は連鎖していくと思うと悲しい限りです。

全体通してとにかくスタイリッシュでおしゃれ、ちょっとした描写もすごく秀逸。ショーンがスキンヘッドにするシーン、女の子とのファーストキス、そしてはじめての暴力...。ひとつひとつの瞬間がすごく印象に残りました。ラストはすごく切ない...。
みおこし

みおこし