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ボーイ・ミーツ・ガールのみやびのレビュー・感想・評価

ボーイ・ミーツ・ガール(1983年製作の映画)
4.4
レオス・カラックス監督の初長編にしてアレックスという一人の男を主人公にした『アレックス三部作』の第1作目。

彼は「ジャン・リュック・ゴダールの再来」「恐るべき子供たち」呼ばれた早熟の才能の1人であり、当時23歳で本作を制作。本作は彼の独自性が詰まった作品と言える。

フランス映画らしいオシャレさは全くなく、暗く重い。
ゴダールの『勝手にしやがれ』を想像させるジャンプカット演出、割れたガラスを利用した集中線演出、二重の死、まさかのラストなどカッコ良さもありながらどこかイタい、若気の至りが目立つ作品でもある。
しかしこれがものすごく痺れる。かっこいい。痛々しさが一周まわって美しい。

何気ない会話も後々に主人公を語る上で重要になってくるものが多く、詩的なセリフには感動。

主人公アレックスにレオス・カラックス自らを投影したかのような物語。

やることなすこと視野が狭く幼く情けない主人公。
失恋の悲しみから盲目に乗り越える主人公。
周囲の視線を気にすることなく前に進もうとする主人公(やはり視野が狭い)
ラスト取り返しのつかないミスをしてしまう主人公。

粗削りで決して分かりやすいストーリーでもない。
しかしレオス・カラックスという一人の人間の価値観、人生観や恋愛観がふんだんに詰め込まれていた。
男と女、一晩の出会いが生み出す思いがけない悲劇を斬新に描いていた。

若さが詰まった最高の作品。
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