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華麗なる恋の舞台でのkaitoのレビュー・感想・評価

華麗なる恋の舞台で(2004年製作の映画)
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15年前に観た映画を2023年に再び観る。
確か不倫の話だったなー、って記憶だけだったけど、今観るとまったくただの不倫の話ではなくて驚く。

舞台女優もので、ジョン・カサヴェテスの『オープニング・ナイト』とか女優ではないけどイニャリトゥの『バードマン』とか思い出す。

舞台演劇映画の好きなところは、僕が従事している飲食業に通じているところがあると思っていて、あのShow Must Go On感に否が応でも共鳴してしまうところだ。

加えてこの映画では何かを演じること、演技をすること自体について描かれていて、アネット・ベニンぐは妻としても、母としても、恋人としてもロールを演じているが、最終的にはしかし、それを肯定している演技賛歌映画と言えると思う。
そして、何かの役割を演じているのは我々観客だって同様なわけで、鑑賞後には自分たちの生活も認めてもらえたような感覚になる。

アネット・ベニングは光の加減とその演技力で少女にも老婆にも見えるし、これはイマジナリー師匠の存在による彼女自身を客観視する視点が要所にあることが大きいと思うけど、彼女のトムとの交際がどこからが演技なのかが分からない作りになっていて、この作りを成立させている演技がとにかく凄い。全部観終わった後に振り返ると、最初から全部演技だったように思わされる。

この映画の中ではお付きのエヴィと、カミングアウト後の同性愛者の彼ら2人の前でだけが、本当の彼女になれているという印象があって、ここもまた素晴らしい。

ちょいちょい、フツーに上手い演出もあって、序盤のアネット・ベニングとトムとの間に棚や柱などで画面上に仕切りがあって、まだ心に距離がある演出がなされていたり、後半、女優の卵の不条理劇っぽい演劇鑑賞のあと、楽屋でのビジュアルでピエロっぽさ出しているのも上手い。
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